【岩手・大船渡の大規模山火事】震災乗り越えた「あわび養殖」、火災で再び試練に立ち向かう若き3代目の挑戦 「今回も必ず復活する!」

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同社の社屋とあわび養殖用のいけすは、大船渡市三陸町綾里(りょうり)の石浜漁港の一画にある。

三陸の漁港
あわびの養殖施設のすぐ目の前には三陸の漁港と漁師たちが暮らす集落が。正面の住宅地や山林の一部も火災で焼けた(写真:筆者撮影)

すぐ目の前は三陸の海。その深さ5~7mからくみ上げた、冷たく、プランクトンが豊富な地下海水を濾過して養殖いけすに引き込み、あわびを育てている。

三陸翡翠あわび
「肉厚、やわらか、肝までうまい!」が売りの三陸翡翠あわび(写真:北日本水産)
アワビの成長
あわびを採卵し、7cm前後まで育てて出荷するまでに少なくとも3年かかる(写真:筆者撮影)

天然のあわびは波にもまれるため身が引き締まって固いのに対し、養殖あわびは肉厚で柔らかいのが特徴だ。コンブなどの海藻や魚粉を原料としたえさで育てていて、抗生剤などを使わない自然由来の安全性も売りだ。

大規模火災による甚大な被害

翔太さんの祖父・勝弘さんが1982年に創業した同社は、当時天然のあわびの資源量が減少する中で、陸上での完全養殖に可能性を見いだし、養殖技術やエサの改良に取り組み、完全養殖を確立した。

「祖父と父は『捕るあわび』から『育てるあわび』に転換することで、持続可能な水産業を進めてきました」と翔太さんは言う。

しかし、この3年がかりで育てる250万個のあわびの大半が大規模火災の影響で死んでしまった。いけすに海水を引き込んでいた配管は火災で焼け焦げ、一部が使用できない状態になったのに加えて、火災による停電で海水をくみ上げるポンプが止まったためだ。

さらに、一部の資材を置いていた倉庫も全焼。あわびと設備を合わせた被害額は5億円以上に及ぶとみられる。

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