ソニー「解体」の日 復活への処方箋はあるか《上》
目下、社内では“チーム平井”の編成が進んでいる。あと1カ月もすれば新しい経営幹部がお披露目されて、ソニー復活へ向けて本格的に動きだす。地ならしとして、管理職以上を対象とした合同ミーティングが行われている。
ある日は平井氏を筆頭にして、テレビ部門の今村昌志事業本部長、デジタルカメラ部門の高木一郎事業本部長、パソコン部門の鈴木国正本部長、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のアンドリュー・ハウス社長などが各事業についてスピーチを行った。
出席したソニー幹部は、「『商品力強化』を繰り返すばかりで具体策に乏しかった」とため息をつく。子会社出身でエレクトロニクス(エレキ)事業の経験が乏しい異例の新CEOに対し、ソニーのエンジニアたちが向ける視線は複雑だ。
エレキを弱体化させたストリンガー改革の誤算
今年で創業66年を迎えるソニーは、かつてない危機にある。今12年3月期は2200億円の最終赤字に沈む見通しだ。
2月8日、米格付け会社スタンダード&プアーズは、業績低迷を受けて長期格付けを過去最低水準となる「BBB+」まで引き下げた。すでに米ムーディーズも1月に「Baa1」に引き下げている。ムーディーズの高橋良夫アナリストは、ソニーの財務体質について「必要があればソニーフィナンシャルの株式を売却すれば資金調達できる」と柔軟性を評価する一方で、「取引銀行との良好な関係を条件から除けば、(数字だけなら)2段階下になる」と指摘する。これは投資不適格のジャンク債に相当するという。
早急な収益の立て直しが平井新社長に課せられたミッションだが、簡単にはいかない事情がある。