ソニー「解体」の日 復活への処方箋はあるか《上》
対して、エレキ事業では、利益を生まない研究所や製造事業所を削減し、ロボットや有機ELテレビなど次世代技術への開発投資も絞り込んだ。結果はすぐに表れて、06、07年度にエレキ事業は一時的に黒字化した。が、翌08年9月のリーマンショックで再び赤字に転落し、今も浮上できていない。
それどころか、気がつけば優秀な技術者の多くがソニーを去り、技術の空洞化を招く結果となった。リストラで疲弊した社内から「ソニーらしい」面白い製品は長らく生まれていない。売上高の7割を占めるエレキ事業の再建なしにソニー復活はありえないが、そのエレキの弱体化に歯止めがかからない。快進撃を続ける米アップルや韓国サムスン電子との差は開くばかりだ。
エレキ凋落の原因を、ジャーナリスト出身でソフト部門を渡り歩いてきたストリンガー氏の技術や製品への理解不足、つまり「エレキへの愛のなさ」に求める声は根強い。この批判は一定程度的を射ているが、ある証券アナリストは、「エレキの赤字を他部門で補えているから、ソニーに危機感が足りない」と指摘する。