「なぜ社員の休みをそこまで大切にするのか?」
生前、その疑問を創業者の山田昭男氏に聞くと、次のような答えが返ってきた。
「安い賃金で、できるだけ長く働かせようという会社が多いからや」
世の中の「社員をこき使う会社」と差別化するためだというわけだが、さらに取材を進めると、そこには山田氏の3つの哲学があることがわかった。
「年間休日140日+有休最長40日」を続ける理由
創業当初、未来工業の夏休みはわずか3日。その後、増収増益が続いたために、休みを少しずつ増やして、現在の休日数になった。
山田氏の言葉を借りれば、休みが多いのは「社員をやる気にするための『餅(もち)』」だという。
「トップがその『餅』を考えて社員のモチベーションが上がれば、それぞれが自分の業務で創意工夫を続ける。その役割分担ができて初めて、会社に活力が生まれるんや」
ちなみに「餅とモチベーション」は、山田氏が好きだった「だじゃれ」。小見出しの「何かの間違いで」は、社員のプライドをさりげなく刺激する山田式スパイスだ。
山田氏が社長から相談役に退いた後、3代目社長の発案で、同社は夏休みを3日減らしたことがある。
ところが、対前年度比で売り上げが落ちるという、前代未聞の結果が出た。それ以降、未来工業の夏休みは10日間のままだ。このとき、山田氏が「夏休みを減らしたら、逆に売り上げが落ちるぞ」と“予言”していたことも話題になった。
社長の「3日間休みを減らせば、その分、儲かる」という発想はわかる、と山田氏は言う。しかし、「『夏休みを3日間も減らされてしまった』という社員のマイナス感情への想像力をまったく働かせていない。社員のマイナス感情は目に見えないからこそ厄介なんや」
それが、彼が売り上げの減少を“予言”した理由だった。
前回も触れたが、同社の就業時間は1日7時間15分。残業も仕事の持ち帰りも禁止。そのため平日も家族と夕食をとれるし、趣味にも時間を割ける。
それが山田氏の「ウチだけが『ライフ・ワーク・バランス』ができる」発言につながっている。彼の言葉を借りれば、「(ウチの社員には)他社みたいに仕事に始終追われ、一度きりの人生を棒に振るような人間になってほしくないからだ」となる。
未来工業の「驚くほど休みが多い実態とその理由」は、おわかりいただけたはずだ。
しかし、同社は休みが多いだけでなく、年収も高いことはあまり知られていない。いったい、「楽園企業」の平均年収は、いくらくらいなのか?
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