スルメイカを日本人が食べられなくなる深刻事態 資源管理が機能せず漁業者は獲れるだけ獲る
これでは国際的な圧力で運用が改善されたクロマグロ以外の魚種については、資源管理の効果が期待できません。さらに、問題があるとわかっていても声に出せない重い雰囲気を感じます。そこで必要なのが世論の後押しです。

「獲り切れない」漁獲枠を設定する日本
漁獲量の減少は年々深刻化しています。このため、ブリ、スルメイカ、サバをめぐり、「TAC(漁獲可能量)」という資源管理に不可欠な言葉がニュースでも散見されるようになりました。
ところが現状では、TACを削減して、あたかも効果がありそうな資源管理を行っているような報道になっています。実際には資源量が減って、それに伴って漁獲量が減り、それに合わせてTACを減らして獲り切れない漁獲枠を設定するという「いたちごっこ」になっているのです。
日本の場合、北欧・北米・オセアニアなどの、漁業・水産業を成長産業にしている国々とは、TACの運用が「似て非なるもの」になっています。筆者は20年以上、北欧を中心とした国々のさまざまなTACと毎年にらめっこしながら最前線で買い付けをしてきました。
海外の現場ではTACの増減は、買い付け価格に大きく影響するのは当たり前でした。なぜならば、ノルウェーサバをはじめTACと実際の漁獲量とが、ほぼ100%同じであるケースがほとんどだからです。TACが2~3割上下すると価格に大きく影響してきます。
ところが、日本はまったく事情が異なります。もともと「獲り切れないTAC」が設定されているため、その数値が多くても少なくても、市況には影響がほとんどないのです。TACが5割減っても市況に影響はなく、相場は日々の水揚げ状況に左右されます。海外の最前線で競争してきた立場からすると、漁獲前のTAC設定で漁獲量が予想できる海外の漁業と、「大漁祈願」に頼る日本の漁業はあまりにも仕組みが異なっています。
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