銀座8丁目でオーセンティックバーを経営しているオーナーの男性は、今年に入ってふさぎがちだ。
自分の店を出してから10年近くが経ち、コロナ禍も落ち着いた。現在の店舗近くにもう1店舗出店し、事業を拡大してみよう――。そう考えていたが、眼鏡にかなう物件がなかなか見つからない。
銀座の飲食店を中心に取り扱う不動産屋に通い始めて半年近く。紹介される物件は狭かったり、不整形な作りだったり、エレベーターのないビルの5階だったりといった、いわゆる「訳あり物件」ばかり。
時折、「これはいい物件ですよ」と紹介されても、目が飛び出るほどの家賃の高さで手を出せなかったという。結局、この男性は銀座での出店をあきらめ、今は違う繁華街で物件を探している。
家賃が説明のつかない上がり方
有名ホテルのバーや銀座のバーなどで長い期間修業をし、独立を考えていた男性も同様だ。修業先のオーナーから「そろそろ1人でやってみては」と勧められ物件を探しているが、やはり家賃の高さがネックとなっている。
「貯金といってもそんなにあるわけではなく、借金せざるをえないのだが、水商売だと銀行からは借りづらい。親類やなじみのお客さんなどに頭を下げて貸してもらえることになったが、家賃が高すぎて到底足りない。夢を諦めざるをえないのだろうか」
男性は、落ち込んだ表情を浮かべなから語った。
こうした話は枚挙にいとまがない。銀座に詳しい不動産業者によれば、ここ数年で家賃が以前の1.5倍から2倍、中には4〜5倍まで跳ね上がっている物件もあるという。もちろん昨今の物価上昇の影響もあるが、「一部の物件はそれだけでは説明がつかないほどの上がり方をしている」と、不動産関係者は口を揃える。
なぜそこまで家賃が急騰しているのか。その理由について取材を進めていくと、銀座の不動産に異変が起きていたことがわかった。これまでの銀座にはいなかったプレーヤーの姿が見えてきたのだ。





















