スルメイカを日本人が食べられなくなる深刻事態 資源管理が機能せず漁業者は獲れるだけ獲る
中国や韓国の漁業が原因とする声もありますが、実際にはそれらの国々も含めて獲れなくなっています。海水温が低い・高い、黒潮大蛇行のせい、クロマグロが食べてしまうなど、さまざまな意見が出てきます。もちろん影響がないとは言いませんが、漁業という最も影響がある肝心のファクターを避けての責任転嫁では問題の本質を見失わせるだけです。その結果、状況の悪化が進むだけで何の解決にもなりません。
これまでまったく獲り切れない量の枠が配分され続けてきました。依然として肝心の効果はないものの、留保枠といった苦肉の策で効果が出るようにしようという姿勢は感じます。
苦肉の策であっても、留保枠を増やして実際には獲れないようにするなど、効果が出る管理に変えていく必要があります。そして、漁獲枠の抑制と漁獲圧の減少が必要だという事実を国民にも理解してもらわなければなりません。
環境要因への責任転嫁は悪化を促進させるだけ
次のグラフは水産白書で海洋環境と資源変動を説明するために使われたものです。それによると北太平洋の水温には「レジームシフト」と呼ばれる数十年規模の変動が認められるとあります。さらに日本の周辺海域では水温が温かい「温暖レジーム」の時期にカタクチイワシやスルメイカなどの漁獲量が増え、逆に「寒冷レジーム」にはマイワシやスケトウダラの漁獲量が増える傾向にあると述べられています。

このデータは2016年までとなっています。それでは2025年の現在はどうなっているでしょうか。まず海水温上昇が話題になっているのはご存じのとおりです。そうであればスルメイカは増えるはずですが、逆に激減しています。こういった矛盾が起きてしまうのは「漁業」という最も影響力がある要素を考慮せずに、資源の増減を語ろうとするからです。
また、日本の周りは魚種を問わず漁獲量がほぼ減少していますが、同じ太平洋でもアラスカ側や、大西洋では、多くの水産資源が持続的になっています。
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