スルメイカを日本人が食べられなくなる深刻事態 資源管理が機能せず漁業者は獲れるだけ獲る
獲り切れないTACがもたらす末路は、乱獲と漁獲量激減です。スルメイカに限らず、サバでもアジでも国際的な圧力で設定されたクロマグロ以外は、どれもこれも効果がないという意味で同じです。
獲り切れない量をTACに設定しても資源管理は機能せず、漁業者は実質これまでどおり、できるだけ獲ろうとします。TACを守っているのに資源が回復しないといった意見を聞いたことがあります。しかしもともとTACの上限に達しない「ザルのような漁獲枠」なので、TACを守っても効果などありません。さらに言えば、肝心の数量管理は表面上のことです。多くの場合は従来と同じように漁が続けられていることは、漁業者の皆さんが一番わかっているはずです。
しかしながら、これをもって漁業者を批判するなどできません。なぜなら問題の根幹は、「資源管理制度」の不備にあるからです。魚が獲れなくなれば単価が上がります。そうなれば、小さい価値がない魚であろうが産卵期であろうが、できるだけ獲ろうとするインセンティブが働きます。自分ごとに置き換えればわかりますが、仕事として魚を獲る立場からみれば、ある意味当然の行動なのです。
スルメイカの例でみるTAC設定の変化
恐ろしいことに、スルメイカの資源は確実に絶滅状態に近づいています。2025年の漁期(2025年4月~2026年3月)の枠が1.92万トンと前年比76%減となりました。ただし、もともとの漁獲量は減少前の7.9万トンどころか1.6万トンしか漁獲されていません。76%減といっても、表面上の数字だけで、実際には漁はこれまでどおりなのです。つまり、漁獲枠の削減自体ではなく、過剰な漁獲によって資源そのものがすでに激減しており、そのための資源管理制度が機能していないことが本質的な問題なのです。
スルメイカに設定されているTACは、依然資源管理に効果がない獲り切れない形式的な枠です。以下のグラフは漁獲量(青)とTAC(オレンジ)の推移を示しています。

スルメイカ資源を獲りすぎでつぶしてしまっており、TACがまったく機能しないことを関係者の一部の方はわかっているはずです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら