「たかが貧血」と軽視する女性達に伝えたい"怖さ" 普段の食事で"鉄不足"に陥る要因は大きく2つ

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したがって、現状では個人の自覚に委ねるしかない。息切れや倦怠感など自覚症状がある重度の貧血の人は医療機関を受診し、鉄剤を処方してもらおう。それ以外の人は、鉄の多い食事を意識的に摂るべきだ。

鉄は肉や魚に多く含まれている。牛肉やマグロ、カツオなどを焼くと茶色になるのは、含まれている鉄の酸化による。このような生物が鉄を豊富に含むのは、筋肉が発達しているからだ。

筋肉中には大量の鉄がミオグロビンという形で蓄積され、安静時には酸素と結合している。そして、運動時に一気に酸素を燃焼させてエネルギーを得る。クジラは筋肉に含まれる鉄の量が多いため、呼吸を止めて長時間潜ることができる。

一方、活動性が低い動物や魚の筋肉中には、あまり鉄は含まれていない。鶏やカレイなどの肉を焼いても茶色にならないのは、このためだ。

鉄不足対策には牛肉やマグロなどの食材が有用だが、残念なことに、これらは一般的に高価で、コンビニ弁当にはあまり用いられていない。身もフタもない言い方だが、健康な食事には金がかかる。

緑黄色野菜や海藻にも多くの鉄が含まれている。こちらも貴重な鉄の摂取源であるが、植物に含まれる鉄は「非ヘム鉄」と呼ばれ、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」よりも吸収が悪い。野菜や海藻だけで十分量の鉄を摂るのは難しい。

このため、炭水化物が中心になりやすい人、ベジタリアンの人はサプリなどで鉄を補充することをお勧めしたい。

安くて簡単にできる鉄を増やす方法

食材以外にも鉄の摂取手段はある。それは調理器具だ。普段使っている調理器具を鉄製に変えるだけで、鉄の摂取量は増える。料理器具の鉄成分が料理に溶け込むからだ。特に酸味の強い食材を料理した場合に、その傾向が強いといわれる。

これなら高級な食材を使わずとも、鉄を補給できる。

尚絅学院短期大学などの研究チームの報告によれば、鉄製の調理器具を使用すると、1回の調理で最大10mgの鉄が食品に溶出するという。このうちどれだけの鉄が吸収されるかは不明だが、毎日の調理に使えば、その影響は大きい。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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