「たかが貧血」と軽視する女性達に伝えたい"怖さ" 普段の食事で"鉄不足"に陥る要因は大きく2つ
このような問題を解決するためにも、出産を希望する女性への貧血対策は重要だが、このことはあまり認識されていない。
まず、日本の女性の貧血の頻度だ。2018年度の厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、20~49歳の日本人女性の19.5%がヘモグロビン値12.0g/dL未満の貧血状態だった。
世界銀行の報告によると、2019年の女性貧血有病率は、日本は19.5%で先進国の中で最も高い。アメリカは15.2%、イギリスは13.6%、フランスは10.6%、ドイツは9.1%だ。
貧血はさまざまな理由で起こるが、若年女性の貧血の大部分は鉄欠乏性貧血だ。普通でも月経で毎月平均で20〜30mgの鉄が失われており、子宮内膜症などで過多月経の人は、喪失量はさらに増える。
このため、若年女性は多くの鉄を意識的に摂取しなければならない。厚労省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の中で、月経のある18~29歳の女性の鉄の1日あたりの推奨量は10.5mgとしている。これは同年代の男性(7.0mg)の5割増しだ。
ところが、2022年の「国民健康・栄養調査」では、20~29歳の女性の平均鉄摂取量は5.9mgにすぎず、推奨量を大きく下回っている。
これについては、いくつかの理由が挙げられている。
まずは食生活の影響だ。経済的、時間的な制約から、手軽な加工食品や外食に頼る場合、鉄は不足しやすい。例えば、コンビニ弁当に含まれる鉄分は1食あたり1~3mgにすぎない。また、後述するように炭水化物には鉄はあまり含まれていないため、おにぎりやパンなどだけで食事をすませる人は、十分な鉄分を摂取できない。
戦後の食糧難よりも低いカロリー摂取
そしてもう1つの理由が、日本人女性のやせ志向だ。おそらく、こちらの影響のほうが大きいと思われる。
慶応義塾大学保健管理センターの長島由佳氏が2023年に『慶應保険研究』に発表した研究によれば、日本人女性のやせ(Body Mass Index:BMIが18.5以下)の割合は11.5%で、先進国の中で突出して高かった。日本以外のG7諸国はすべて3%以下だ。
特にやせが多かったのは日本人の若年女性で、20代は20.7%、30代は16.4%だった。これはこの世代でダイエットが流行しているからだ。
2019年の「国民健康・栄養調査」によれば、20代女性の平均摂取エネルギー量は1600kcalで、2018年の1704kcalから減少していた。ちなみに1995年は1886kcalで、右肩下がりが続いている。いまや若年女性の摂取カロリーは、戦後の食糧難の時代よりも少ない(1946年で1696kcal)。
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