「たかが貧血」と軽視する女性達に伝えたい"怖さ" 普段の食事で"鉄不足"に陥る要因は大きく2つ
厚労省が策定した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18~29歳の女性の推定エネルギー必要量は、身体活動レベルが低い場合は1750kcal、普通の場合は2050kcal、高い場合2300kcalなので、日本の若年女性の摂取カロリーはまったく足りていない。
カロリーが低いということは、すなわち食事量が少ないことを意味する。鉄分が多い食事を摂っていても、食事の量そのものが少なければ鉄は不足する。
日本の多くの女性は、“やせていたほうが、きれいである”と信じている。欧米でもスリム志向の傾向があるが、日本のほうがやせ志向は強いのではないだろうか。
さらに、女性の社会進出が進んだことも、この状況を悪化させているように思う。というのも、キャリアを積む女性ほど容貌や装飾品以上に体型が重視されやすく、これは先進国では共通の傾向だという。アメリカ在住の医師である大西睦子氏は、「アメリカでは、スリムであることは自立した女性の最低条件」と言う。
ただ、彼らのスリムに対するイメージは、日本とは若干異なるようだ。大西医師は「アメリカのキャリアウーマンが憧れるのは、かつてのヒラリー・クリントンや、近年のカマラ・ハリス」と述べる。カマラ・ハリスは「ジムでのトレーニングやランニング、ヨガなどを通して、体型維持に努めている」という趣旨の発言を繰り返している。実際、日本人女性が望むようなやせ体型とは違う。
日本で貧血対策が進まない理由
話を貧血対策に戻す。
日本はこちらも遅れている。アメリカでは連邦政府の規制により、精製小麦粉には鉄の添加が義務付けられており、その量は小麦粉100gあたり約1.4~1.65mgだ。
ヨーロッパは国により異なり、デンマークのように精製小麦粉に鉄の添加が義務付けられている国もあるが、多くはメーカーの自主努力に任されている。イギリスでは、規制当局が鉄を含むミネラル添加のガイドラインを策定し、政府もその推奨に積極的に関与しているため、精製小麦粉製品の多くにアメリカと同程度の鉄分が添加されている。
欧米に限らず、現代人の栄養の中心は炭水化物だ。したがって炭水化物に鉄を添加することは、鉄不足対策として合理的だ。日本政府も同様の対応を採るべきだろう。
だが、現実は難しい。鉄分を添加することで食材の味が変わるからだ。
鉄は独特の生臭い味がする。口の中を切ったときに感じるような、あの味を好きな人はいないだろう。鉄欠乏貧血の治療では、1回あたり100mg程度の鉄剤を服用してもらうが、2~3割の患者が吐き気を訴える。
食材に鉄剤を添加することで味が落ちれば、売り上げが下がる可能性がある。そのため、現時点で日本の食品メーカーが自主的に鉄分を添加することはない。
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