「既に激安」ガソリン税引き下げ阻む不都合な真実 日本の小売価格はアメリカに次いで2番目に低かった

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第4に、ガソリン税引き下げでガソリン価格が下がるとガソリン需要が増えて、脱炭素に向けた日本の取り組みに逆行してしまうという懸念があります。

2020年のG20サミットで菅義偉首相(当時)は、「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする」という日本の目標と実現への決意を示しました。脱炭素は「実現できたらいいなぁ」という願望ではなく、日本の国際公約です。

物価高という現象は国内の経済問題ですが、国際公約に反する政策の導入は国際的な政治問題です。ガソリン税引き下げを実施するなら、国際社会の理解を得る必要がありますが、ガソリン価格が極めて低く、財政難に悩んでいる日本がその必要性を合理的に説明するのは困難でしょう。

以上4点の通り、ガソリン税引き下げにはさまざまなハードルがあり、与野党で合意したからといって来年以降すんなり実現するかは不透明です。政府・野党、そして我々国民は、これらの論点について一つ一つしっかり考える必要があります。

「地方で自動車に乗って暮らす」は持続可能?

ところで、こうした議論を展開すると、次のような批判をよくいただきます。

「公共交通機関が充実している都市部と違って、地方では自動車が生活の必需品だ。ガソリン価格の高騰は地方の住民にとって死活問題で、理屈をこねている場合ではない」

地方の住民にとって、ガソリン価格の高騰が大問題だというのは、まったくその通りです。しかし、仮にガソリン税引き下げが実現したとして、「地方に住み、自動車に乗って暮らす」という現在の社会を維持できるのでしょうか。

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