名古屋に「担々麺」を提供する店がなぜ多いのか 20年前から営業する担々麺専門店「想吃担担面」
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一方、大変だったのは汁なしに使用する麺だった。汁ありの細麺では濃厚なゴマの風味に負けてしまうため、平打ち麺にしたい旨を製麺業者に伝えると、
「レシピ通りの太さに麺を切る刃がなく、特注になるため、決められたロット数を注文してくれないと対応できない」と難色を示されたという。それでも妥協することなく、業者に平打ち麺のレシピを伝え、発注した。ところが、
「オープン当初は物珍しさもあってメディアが紹介してくれたりしましたが、客足はさっぱりでした。当時の店舗は間口が狭くて、外から店内が見えなかったため入りにくい雰囲気だったのも原因だったと思います。食べに来たお客さんから『何で辛いんだ!』と叱られたこともあります。オープンして3年くらいはずっと赤字でしたね」(中島さん)
追い飯で締めくくる、汁なし担々麺の食べ方
名古屋都ホテルは2000年3月に営業を終了した。「四川」で働いていた料理人たちが独立して四川料理店を開店させたが、どの店もハードルが高く、名古屋で担々麺が広まることはなかった。2000年代初頭において担々麺はまだ知る人ぞ知る存在だったのである。
担々麺の見た目から何となく辛い麺であることは伝わるものの、店の前を通りかかった人から「ニンニクがたっぷり入っているんでしょ?」と尋ねられたこともあった。明らかに台湾ラーメンと混同していたのだ。そんなことから中島さんは担々麺の核となる芝麻醤や五香ラー油、皇帝麺についてほとんど伝えてなかったことに気が付き、店内外のPOPから素材や味付け、調理法のこだわりを発信した。メディアの取材においても同様に対応した。
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当時、筆者がいちばん驚き、食欲をそそられたのは、汁なし担々麺の食べ方。麺を食べ終わったら、ライスを投入して器に残る肉味噌やネギと混ぜ合わせて「担々飯」にして締めくくるのである。いわゆる“追い飯”である。追い飯がしたいがために汁なし担々麺を注文するのは筆者だけではないだろう。
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