名古屋に「担々麺」を提供する店がなぜ多いのか 20年前から営業する担々麺専門店「想吃担担面」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
中島三鐘さん
明佑の社長、中島三鐘さん。中島さん自身も担々麺、とくに汁なし担々麺が大好物とか(筆者撮影)

中島さんは4代目の社長で、高校卒業後に大阪の辻調理師専門学校で中華を学んだ後、大阪上本町にある大阪都ホテル(現・シェラトン都ホテル大阪)の「四川」で調理スタッフとして働いた。その後、神戸の老香港酒家でサービスを担当した。いつかは自分の店を持ちたいと思っていたが、27歳のときに父親が病に倒れて、仕事を手伝おうと明佑へ就職した。

当時、名古屋駅前の三井ビルに「小鬼來了(シャオグイライラ)」という高級中華を出店していたが、経営状態は悪かった。その後、フカヒレ料理に特化した「來來煌星華(ライライファンシンファ)」、「竜竹(ドラゴンバンブー)」へとリニューアルするも苦戦が続いた。どの店でも担々麺を提供していたが、あまり注目されることはなかった。

「ある日、いつも担々麺を食べに来てくださる常連のお客さんから『エスカで担々麺の専門店をやってみませんか』と言われたんです。そのお客さんはエスカの営業担当だったんです。それで『想吃担担面』の1号店をオープンさせました。ちなみに『想吃担担面』とは『担々麺が食べたい!』という意味です」(中島さん)

すべての材料にこだわるも客足はさっぱり

オープン当時、筆者も取材に行った。そこで初めて本場四川の担々麺は本来汁なしであることを知り、汁なし担々麺を試食させてもらった。自家製の芝麻醤のコクと香り、五香ラー油と花椒が相まった複雑な風味と刺激のバランスが秀逸で、平打ち麺との相性も抜群だった。名古屋都ホテル「四川」で初めて担々麺を食べたとき以来の衝撃を受けた。

想吃担担面   汁なし担々麺
「想吃担担面」の汁なし担々麺(990円)。麺が見えないほどのネギがのる(筆者撮影)

「芝麻醤は皮など余分な部分を削ぎ落とした吟醸ゴマをミンチミンサー(肉をミンチにする機械)にかけて、あえて粒感を残した状態で油を馴染ませることで、市販の練りゴマでは出せない甘みと香りを閉じ込めています。五香ラー油も唐辛子と山椒、八角、シナモン、陳皮を用いた自家製で、商標登録もしました」(中島さん)

麺にもこだわり、「皇帝麺」と名付けた。汁ありには香港で食べた細くてコシのある麺を参考に卵を練り込み、1週間ほど寝かせるという。熟成発酵させることで独特の食感とコシが生まれるのだ。

次ページ2000年代初頭、担々麺はまだ「知る人ぞ知る」存在
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事