不意討ちの「停戦交渉」ウクライナは和戦両様の構え トランプ政権主導の交渉、ロシア寄りの発言も

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なぜか。取材した結果、事情がわかった。まず1つは、ウクライナ代表団としては、トランプ政権を国際会議の場で強く批判することで、アメリカとの関係をこじらせることを回避したかったことがある。

同時に、より根本的な理由があった。先述したトランプ氏のロシア寄りの発言にもかかわらず、実は今後の対ロシア交渉に対するトランプ政権の仲介案は、まだできていないとの認識がウクライナ側にあるからだ。

仲介案での意見調整が不十分

今後、ウクライナ側が自分たちの主張をできるだけ多く、アメリカ側に受け入れさせることで、アメリカによる仲介案をウクライナにより有利な内容にできるとみている。

トランプ政権のウクライナ・ロシア担当特使ケロッグ氏が近くキーウ入りして、初めてウクライナ側と仲介案の内容に関する意見の調整を行うと言われている。ゼレンスキー政権としては、こうした協議で今後トランプ政権との間で停戦交渉をめぐる「共通理解」を図る構えだ。

具体的には、停戦の在り方や、ウクライナが停戦や和平の条件として求める自国の安全保障のあり方などについて調整を図るとみられる。

今後の「共通理解」においてトランプ政権との調整で大きな課題となるのは、ゼレンスキー政権が求める安全保障の「内容」に関する要素と、早急な停戦実現を目指すというトランプ政権の「時間的要素」を両立できるか否か、だ。

ゼレンスキー氏は2024年12月、共同通信などとの会見で、クリミア半島や東部などのロシア軍占領地域について武力奪還が困難と認め、奪還できなかった領土の回復は外交交渉を通じて目指すとの考えを初めて表明した。

これは、現在ロシアが制圧している国土の約20%の地域を、ロシア領として当分の間受け入れることを、事実上認めたことを意味する。

そうなれば、ロシア軍のウクライナへの軍事的圧力がいっそう強まる。これに対応するための安全保障策として、ゼレンスキー政権は、ウクライナのNATO加盟を求めている。イギリスやフランスなどは加盟に前向きだが、アメリカとドイツが反対している。

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