「インフラ更新が心配」な街ランキング・関西編 将来の更新費用が膨らむ自治体は全体の96%
しかし、この数字には注意が必要で、今回集計したインフラの対象経費からは地方公営企業(上下水道)の分を除いている。より正確に言うと、同市の管理計画では、将来の更新費用として上下水道にも言及し、数字を示しているものの、直近の更新費用については触れていないのだ。
したがって、将来の費用と直近の費用の比較条件をそろえるため、今回はやむなく上下水道の分を除外して増減率を算出せざるをえなかった。ちなみに、上下水道の分を含んだインフラの更新費用は年平均161.4億円に跳ね上がる。
道路などの将来経費に言及していない自治体も
公営企業(上下水道のほか、公共交通やガス事業なども該当)の会計においては、民間の企業会計と同様に複式簿記を採用し、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を作成する。通常の自治体の一般会計とはまったくルールが異なり、各自治体にとってはいわば「別会社」のような扱いなので、実は管理計画から除外しているケースは少なくない。
事実、今回の増減率の算出においては、直近の投資的経費の中に公営企業会計分を確認できず、これを除いて算出した自治体は茨木市のほかにもある(兵庫県神戸市、同・西脇市、京都府京都市、同京田辺市、同宮津市、滋賀県野洲市、同東近江市)。その代わり、これらの自治体においては、公営企業単体の管理計画を別途策定しているところもある。
ただ、住民視点からいうと一般会計、公営企業会計という区分は重要ではなく、「自分の住んでいる地域のインフラが今後どうなるのか」を知りたいわけである。よって、本来はこの管理計画において上下水道など公営企業分も含めたインフラの将来像を示してほしいところだ。
さらにいうと、今回集計した自治体の中には道路や橋梁などのインフラに明確に言及していないケースが散見された。つまり、公共施設(ハコモノ)のみ将来経費の数字を公表し、そのほかのインフラの将来経費については数字を示していない(またはグラフのみの表記にとどめている)のだ。
これらの自治体については、ランキングでほかの自治体と比較するのはフェアでないとの判断から、集計対象から除外した。しかし、これでは住民の関心に十分応えているとはいえないのではないだろうか。
もっとも、前回も述べたとおり、ここで示した増減率はあくまで「目安」でしかない。大事なのは、これをきっかけに自分が居住している自治体のインフラの管理方針や計画に関心を持つことだ。
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