そして、圭子さんは娘さんに思いを伝えます。

「私が話し終わると娘はぶちっと電話を切って、その後のメッセージは既読スルーです。不機嫌になったんでしょうね。不安でいっぱいでしたが何もせず様子を見ていたら、2日後に私に八つ当たりするかのような怒りのスタンプが連打されてきました。それを見て私は『あ、大丈夫だ』と思いました」
親に八つ当たりする行為は、子どもが感情を吐き出しながら現実と折り合いをつけるプロセスでもあります。圭子さんは葛藤しながらも前に進もうとしている娘さんをしっかり感じ取りました。
その後、娘さんは見事に高校に合格。高校1年生になり、がんばって通学しています。
「時々アップダウンがあるようですが、それでも自分なりに気持ちを立て直して行き続けています。人前に出るのが嫌いな子なのに、文化祭では部活の発表でステージにも立ちました」
圭子さんは明るい表情で今の様子を教えてくださいました。
言うべきことを言うべき時に言った圭子さんの強さ
乳がんの入院中に圭子さんが娘さんに伝えた言葉。
「受験して本当に高校に行きたいなら、今ちゃんとやらないとだめだよ。お母さんに嫌な役をさせないで、先生には自分で言いなさい」
私はここが圭子さん母娘の分岐点だったと思います。受験の成功はこの言葉にあったのだと。
不登校の親は腫れ物にさわるようにお子さんに接してしまいがちです。受け止めることを優先するあまり言いたいことが言えなくなるのですね。でも、気持ちを受け止めることと何でも許してしまうことは別です。
不登校からの回復は見守ることと導くことの両方が必要です。
圭子さんは日頃から娘さんの話を傾聴し気持ちを受け止める一方、言うべきことを言うべき時にきちんと言葉にされました。
闘病中で娘さんのサポートが十分できないことを負い目に感じていたこと、自分が厳しく言うことによって受験をダメにしてしまうのではないかという不安は察するに余りあります。
小5から不登校に向き合われていた圭子さんがダブル受験のタイミングで乳がんになり、闘病生活にもかかわらずふたりのお子さんを見事合格に導かれたことは私にとって忘れることのできないできごとでした。
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