「台所で料理も」寝たきりの70代女性に起きた変化 在宅でもできる「がんの痛みを取る」治療の中身

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このやり方は、自宅でも病院でも変わりません。だからこそ、冒頭のAさんも、自宅にいながら緩和ケアをしっかり受けてもらうことができた、というわけなのです。

緩和ケアを受けたいと思ったら…

緩和ケアを受けたい場合は、まずは主治医に相談しましょう。

筆者の外来もそうですが、一般的には主治医から緩和ケア医に依頼があるというのが一般的です。主治医に話しにくい場合は、かかっている病院の「がん相談室」などの相談窓口や、化学療法室の看護師などに問い合わせてみてはどうでしょうか。

病気を診断されて、「今後のことが心配」といった相談も緩和ケアの対象ですし、治療の真っ只中というタイミングでも緩和ケアは並行できます。筆者の知人は、最近、がんの手術を受けて入院していたときに「緩和ケアを受けたい方へ」という案内の紙をもらったそうです。徐々に病院でも緩和ケアの必要性が認識されてきたのだと思います。

実際、緩和ケアをがんの治療と並行することで、治療に前向きになれた方もいます。

がんの再発を診断された患者さんでしたが、痛みが強く、食欲が落ちて眠れなくなっていました。痛み止めの量を増やしても効かず、主治医からの紹介で緩和ケアを担当する筆者に紹介がありました。

話を伺うと、その患者さんは再発のショックからうつ状態になっていて、精神的なつらさが身体的な痛みを増幅させている様子でした。

そこで痛み止めの量を少し増やし、抗うつ薬を処方しました。すると少しずつ痛みが和らぎ、治療に前向きに取り組めるようになったのです。

緩和ケアに関わるタイミングは人それぞれです。大切なのは、不安や悩み、違和感、ちょっとした気になる症状を感じたら、1人で抱え込んだりあきらめたりせずに、まずは誰かに相談することです。

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病気や治療による不安やつらさ、痛みは終末期に限りません。目が痛くなったら眼科に行くように緩和ケアに行く――緩和ケアの専門医の1人として、それぐらいの感覚でもいいと思っています。

何より緩和ケアや医療用麻薬に対するネガティブなイメージが払拭され、正しい理解のもとで適切な薬を使うケアにつながってほしいと思っています。

(構成:ライター・松岡かすみ)

中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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