経営のプロがなぜ「コンサル倒産」過去最多の理由 野良コンサル、細分化、大手リストラの波…
「コンサルを5人抱えたら、それだけで給与と福利厚生費込みで月に600万~700万円はかかる。その規模になると、事務所に応接室や会議室が必要になるため、月々の家賃は100万円を超えてくるでしょう。
新たな技術や知識、スキル習得のために各種セミナーに出席して最新トレンドを学ぶための投資が必要になるほか、週3、4回は経営者などと会食をして情報収集する必要もある。
その結果、キャッシュフロー面では毎月1000万円程度のお金が出ていく構造になるのです」
予想以上に出費が重なるため、起業したコンサル会社を畳んで、“サラリーマン・コンサル”に復帰するケースも少なくないという。
総務省のキャリア官僚を経て一時BCGに籍を置き、現在はフリーのコンサルタント兼“元官僚芸人”として活躍する松本昌平氏が話す。
「一時、コンサル需要の拡大を受けて大手コンサルティングファームが急激に人を増やしたんです。日本のアクセンチュアは2015年から2021年にかけて社員を3倍に増やしました。
しかし、コンサル業界は独立する人が多いうえに、外資系を中心にリストラが激しい。グローバルの話になりますが、2023年にはアクセンチュアが2万人規模のリストラを、昨年はPwCが1800人のリストラを発表しました。
その主な対象は管理部門の人材で、AI活用によるコスト削減を目的としたものでしたが、こうしてコンサル会社から放り出された人材の多くがフリーのコンサルとして活動を試みる。
その結果、過当競争にさらされて疲れ果て、サラリーマンに戻る人が相次いでいる」
コンサルを派遣
事実上、“派遣スタッフ”のように働いているコンサルも増えているという。
「昨今の人手不足で大手企業は採用数を増やしていますが、それでも人手が足りない。そのため、大手コンサルティングファームのなかには、取引先企業に常駐するスタッフとしてコンサルを派遣するケースが増えている」(松本氏)
そう聞けば、コンサル業界の先細りが予想されそうだが、実はまだまだニーズはある。
鈴木氏は「現在、DXでの変革を起こすコンサルが業界の中核を担っていますが、中小企業のDX化が本格的に進むのはこれから」と話す。
また、友田氏は「後継者問題を抱える中小企業では、事業承継やM&Aのコンサルティングを求める企業が少なくない」という。こうした旬のテーマを満たしたコンサルの需要は今後も高まり続けると予想されるのだ。
もしかしたら今後は、古い知識とスキルで立ち行かなくなった「経営のプロ」たちを救うコンサルも増えるかもしれない……。
(ジャーナリスト・田茂井治)
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