平岩:私もそうでした。でも、今の子どもたちはそれがわからないくらい、自分のやりたいことを考える時間がないのかもしれません。考える前にどんどんやることを提示される状態で、考える力を失くしてしまっているとすれば、どうしたら自分のことを考えられるようになるかというと、それができるのが余白の時間なんです。
「適切なリスクをとる経験」が子どもの健全な成長を促す
窪田:大人が子どもの経験を制限しすぎてしまっているのかもしれませんね。オーストラリアの研究者が発表した論文によると、「子どものときに適切なリスクをとる経験をしないと、負のリスクをとってしまうようになる」ことがわかっています。
適切なリスクとは、ちょっとした危ない遊びによって冒すリスクのことで、例えば屋外で自由に遊び、高いところに登ったり、そこから飛び降りたりすること、大人の目を離れて行動することなど。
そうした危ない遊びによって適切なリスクをとる経験をしなかった子どもたちは、大きくなったときに万引きなどの負のリスクをとってしまう可能性が高くなるそうなんです。それに、情緒不安定になってしまうことも。
平岩:子どもたちは遊びを通して、自分でリスクをとる経験をしているんですね。それが精神の発達にも影響があるとは、興味深いです。
窪田:ただ、あくまでも「危険」と「リスク」は別です。例えば、小さな子どもが交通量の多い道路を渡ったり、割れたガラスの近くを裸足で歩いたりするのは、それは絶対にとめなければならない危険な行為。遊びのなかで味わうスリルや難しいことへのチャレンジを、子どもの健全な成長に必要な「適切なリスク」だととらえています。
平岩:なるほど。
窪田:子どもたちは遊びを通して、何をすれば危ないのか、回避するにはどうすればいいのかをトライ&エラーで学んでいきます。その経験の積み重ねによって自分の限界がわかり、自分自身をコントロールできるようになる。とはいえ、親が子どもにリスクのある遊びをさせることはなかなか難しいのですが。