「カスハラ」効果期待できない対策に追われる内情 「お客様は神様」という考え方を改めることが第一歩
「今のところ被害は報告されていません。ただ、お客様のどういう行為がカスハラに当たるのか線引きが不明確なので、店長・売り場チーフといった責任者が疑心暗鬼になっています。常にカスハラを意識しビクビクしている状態で、何とも居心地が悪いです」(総合スーパー)
「全社的な調査をしていないので、実際に被害があるともないとも言えません。細かいことを取り上げたら年中起こっているでしょうし、大きく見ると何も起こっていないという感じです。社員には、『極めて重要な問題だ』と言っていますがね」(ドラッグストア)
最近、SNSなどメディアでは、さまざまなカスハラ被害の事例が報告され、騒然となっています。しかし、今回の調査の範囲では、事態を冷静に受け止めている企業が多いという印象でした。
直接の被害よりも周囲・社外への影響が大問題
ここからは、①「被害を確認しており、大きな問題である」と回答した企業のコメントを見ていきます。企業は、カスハラのどういう面を「大きな問題」だと認識しているのでしょうか。
「当社では、昨年カスハラ被害があったことを受けて、対応マニュアルを作成したり、メンタルケア研修を開催したりと、対策に追われました。少しでもトラブルがあったらマネジャーが対応するようにしています。その後問題は起きていませんが、現場が疲弊し、業務効率の悪化を招いています」(ホテル)
「一昨年、当社の従業員らしい男性がカスハラ被害をSNSで訴えました。そんなに広く拡散したわけではありませんが、それを境に、アルバイト募集への応募数が目に見えて減り、オペレーションに支障が出るようになっています」(飲食店)
「3年前に当社のカスハラ被害がSNSに上がりました。たいした出来事ではなく、社内では皆ほぼ忘れていますが、就活生や取引先との話の中でよく話題になります。企業イメージが悪化してしまうことが、当社では最も大きな問題です」(家電量販店)
こうしてみると、カスハラ被害に遭った従業員のメンタルヘルス不調や離職といった直接的な影響もさることながら、職場のメンバーやSNSを通して社外の関係者などに影響が及ぶことを企業は問題にしているようです。
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