「カスハラ」効果期待できない対策に追われる内情 「お客様は神様」という考え方を改めることが第一歩

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ここからは筆者の考察です。現在、多くの企業は、自治体などが作成したガイドラインなどに沿って、コンサルタントなどのサポートも得ながら、以下のような対応を進めています。

 対応方針策定
 対応マニュアル作成
 相談窓口設置
 メンタルケア研修
 カウンセリング

これらは、実際に被害が起きたらどうするかという「事後の対応」、被害に遭った従業員をどうケアするかという「1次的な対応」です。こうした対応は、企業の責務として絶対に必要です。

ただ、それだけでは十分ではありません。予防的な「事前の対応」によって被害が発生しないというのが、理想の状態でしょう。また、職場のメンバーやSNSを通して社外の関係者などに影響が及ぶのが問題であることから、「2次的な対応」がより重要です。

SNS対策が必要

「事前の対応」では、企業の対応姿勢が問われます。カスハラの加害者は相手を選ぶので、曖昧な態度の企業にはどんどんつけ込み、毅然とした態度の企業にはおとなしくします。被害があったら警察に即通報するなど毅然と対応するとともに、自社の対応方針や過去の対応結果をPRすると、一定の抑止効果になるでしょう。

「2次的な対応」では、SNS対策がポイントです。今回の調査で、カスハラ問題へのSNSの影響を指摘するコメントが多数ありました。

「当社のカスハラ被害がSNSに投稿されました。事実無根だったのですが、SNSで拡散すると嘘でも事実のように受け止められます。投稿した元アルバイトに連絡を取ることができず、ひたすら嵐が過ぎ去るのを待ちました」(アパレルショップ)

SNS対策はどの企業も暗中模索ですが、自社にとって不利益になるSNS投稿があったら即座に削除を依頼する、虚偽の投稿には法的措置を執る、といった対応が必要でしょう。なお、SNS対策は、一企業の対応では限界があり、行政の対応にも期待したいところです。

日本企業には、「お客様は神様」「従業員は企業という家族の一員」という考え方があり、経営者が客や従業員に曖昧な態度で接していることが、カスハラやSNS投稿の根底にあります。まず経営者がこうした考え方を改めることが、対策の重要な一歩になると思います。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。
Facebook:https://www.facebook.com/takeshi.hioki.10
公式サイト:https://www.hioki-takeshi.com/
 

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