出版不況に「超豪華な無料雑誌」京都で爆誕のワケ 紙にこだわる大垣書店が勝算見込んだ本屋の未来

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京都の雑誌の決定版にしたいという思いと、京都の出版界を活性化する下支えをしようという思いが合わさっている。書店が出版をすることによって「いろいろな出版社さんとコラボできること」をメリットとして大垣さんは挙げた。

『KYOTOZINE』創刊号をめくると、美麗で大きな写真を使った、京都の街や人や食や職を紹介する中で、関西の食雑誌として全幅の信頼ある『あまから手帖』の編集長が登場していたりもする。情報誌として競合になりそうなところと手をつなごうという意識を感じる。

「『編集者目線の京都』という連載で他誌の編集者さんにもご登場いただこうと思っています。すでにさまざまな出版社さんからも紙面でコラボレーションしたいというお話をいただいています」

この構想の大元は、漫画雑誌だった。

「少年ジャンプと少年マガジンがコラボした『少年ジャンマガ学園』という共闘企画があって(2019年)、それを見てとてもいいなと思ったんです。これまでにない、出版社の境界を超えられるメディアになればと思っています」

羅
『羅』はフリーペーパーでありながら、トレーシングペーパーのような表紙カバーがかかった手の込みよう(筆者撮影)
羅
ページをめくると、デザイン性の高いレイアウトが目を引く(筆者撮影)

「本が作れる本屋」が誕生

書店は出版物を売る場というだけでなく、人が集まり、ものが生み出される場所にしたいという構想を大垣編集長はもっている。はじまりは、2021年に彼がオープンさせた「堀川新文化ビルヂング」だ。

京都市上京区、西陣の、古い堀川団地の最北棟の跡地に建った、書店、ギャラリー、カフェ、印刷工房、レンタルオフィスが併設した複合ビルである。

1950年から1953年にかけて建った店舗付き集合住宅・堀川団地周辺地域の再開発、活性化の一端を担っている。『KYOTOZINE』創刊号の中にも、ビルのある堀川商店街の記事が掲載されている。

『KYOTOZINE』の創刊号の表紙で、京都在住の作詞家・松本隆さんが『KYOTOZINE』のロゴマークが印刷されたのれんをくぐっている場所が、堀川新文化ビルヂングである。

「本とものづくりが楽しめる場所として地元に長く愛される書店とギャラリーに育てていきたい」という思いもあり、印刷工房で自費出版ができるようになっている。

批評誌『羅』はこのビルから発信されたものだ。書店オープンのときは『理想の書物』(ちくま学芸文庫)という品切れ、重版未定になっていた本を、大垣書店が経費を負担し限定再販した。

大垣書店
アートな空間の堀川新文化ビルヂング。『KYOTOZINE』のロゴが印刷されたのれんが印象的だ(筆者撮影)
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