「人類より豚にふさわしい」と言われた嗜好品 教養として知りたい「カカオの知られざる歴史」

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味はともかく、アステカの皇帝が健康のために愛飲していたカカオを知り、コルテスはその価値を見抜きます。そして1512年、アステカ帝国を征服し支配下に置いたスペインは、貢物としてカカオを受け取るようになりました。これがきっかけとなって、スペイン人はカカオ豆を母国へ持ち帰ることとなります。

先ほど「うわっ、美味しくない……」などと思わず書いてしまいましたが、その理由は、当時のショコアトルの味は、極めて独特だったからです。その証拠に、当時メキシコに滞在していたイタリアの探検家ジローラモ・ベンゾーニはこう記しています。

「人類よりは、豚にふさわしい飲み物のように思える」

かなり表現が強めですよね(笑)。

当時のショコアトルは、カカオに唐辛子やトウモロコシを混ぜてすりつぶし、水を加えただけのドロッとした飲み物でした。そのドロッとした苦い味が口に合わず、スペイン人は「どうにかせねば……」と考えたのでしょう。この飲み物にハチミツや砂糖を加えました。

貴族たちを魅了した「ショコアトル」

素晴らしいレシピの誕生です。これこそが、現在私たちが知る、甘くて美味しいチョコレートドリンクのルーツなのです。ショコアトルは、コルテスやキリスト教の修道士らによってスペインに伝わり、貴族階級の人々を魅了しました。

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貴族たちがどれほど魅了されたかといえば、スペイン国王フェリペ2世がポルトガルを併合したときに、ポルトガル宮廷に「宮廷ココア担当官」(チョコラティロ)を設けたほどです。ココアへの本気度が違いますね。

そしてその後、エキゾチックで健康にもよいとされるチョコレートドリンクはスペインで大切に守られ、約100年もの間、国外に持ち出されることはありませんでした。

市川 歩美 チョコレートジャーナリスト/ジャーナリスト

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いちかわ あゆみ / Ayumi Ichikawa

大学卒業後、民間放送局に入社、その後NHKで、長年ディレクターとして番組企画・制作に携わる。現在はチョコレートを主なテーマとするジャーナリストとして、日本国内、カカオ生産地などの各地を取材し、情報サイト、TV、ラジオなど多くのメディアで情報発信をしている。チョコレートの魅力を広く伝えるコーディネーターとしても活動。商品の監修や開発にもかかわる。

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