辻仁成「ぼくの人生にそっと寄り添う子犬」の存在 ぼくを素直な人間にさせたのは、三四郎だった

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ぼくは子供たちを愛している。それで十分だ。

そのかわり、この子犬と、ぼくは田舎で、海を見ながら生きることになる。

三四郎がぼくと世界をつなぐ

少しずつ、田舎にも友だちが増えてきた。

そこはぼくが買った小さなアパルトマン、引っ越すこともない。

パリから二、三時間、英国海峡を見渡せる浜辺の、人口、三千人程度の街である。

でも、人は優しい。

三四郎を通して、どんどん、新しい出会いを続けている。

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この子がぼくと世界をつないでくれている。それは、想像してほしい、すごいことじゃないだろうか? この子は、初めて会う人に脅威を与えないし、逆に、人々の微笑みを誘う。それは本当に、目元が緩むほどの、愛おしい存在なのである。

ぼくは物事に厳しすぎる性格だから、人間と渡り合うのが下手だ。

ぼくは変わり者なのだ。もちろん、よく、わかっている。でも、そんなぼくなのに、三四郎は、傍にいる。彼はきっと、ぼくを頼っている。この子を死ぬまで面倒をみることが、ぼくの幸せかもしれない。面倒くさいなァ、と思う朝の散歩も、ぼくがやらないとこの子が不幸になる。三四郎を抱きしめてあげると、そのぬくもりが伝わってくる。ぼくはぼくなりに生きていこうと思う。寒い冬にも虹がかかるのだから…。

まるまって眠る、ミニチュアダックスフンドのさんちゃん
三四郎は、特別な波動で、ぼくの体調を整えてくれている気がする(写真:辻仁成さん提供)
辻 仁成 作家

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つじ ひとなり / Hironari Tsuji

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。

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