銀座に爆誕「余白だらけのビル」一体何が凄いのか 近年の再開発のあり方にデカい一石を投じている
その意味では、ビルの収益を来場客からの直接的なものにするわけではなく、より広い視野でのお金の循環の中で長期的に稼いでいこうとするソニーパークのモデルは、まさにこの<迂回する経済>的な施設のあり方ではないだろうか。
最近の再開発は、暮らしを豊かにしているだろうか?
吉江が語る通り、近年の特に東京を中心とする再開発においては「直線する経済」に基づき、短期的にすぐに資金が回収できるような建物が作られがちである。
その見えない構造は、実は私たちが見える姿で現れている。最近、東京に誕生する再開発のビルについて「なんだか同じ感じだなあ」と思うことはないだろうか。高層ビルに高層階にはホテルが入り、中層階には大企業のオフィス、そして低層階にはテナントがびっしり詰まったオフィス……。
簡単にいえば、それらはこの「直線する経済」が作っている。少ない土地面積の中で最大限に資金を回収しようとすれば、制度の範囲内ギリギリでビルを高くして床面積を増やし、そこにたくさんお金を落としてくれる人々を呼び込むのが早い……。
もちろん、これはあまりにも単純化されすぎた図式だし、各事業者はその中でもなるべくベストを尽くしてその開発案件をより良くしようとしているはずである。
ただ、やはり全体としてみて、どうしてもこのような形の建物に収斂しているように見えるのも、否めない事実である(その証拠に、いまだに「日本一の高さ」で競っているようなビルがどんどん建っている。でも、私たちは「高さ」を求めているのだろうか?)。
ただ、すでに多くの論者が指摘しているように、これからの日本は人口減少社会であり全体として商業施設を使う人も減っていけば、オフィス需要も減っていく。もちろん東京だけはいまだに人口が増え続けており、すぐにはこうした問題に行き当たらないかもしれない。
しかし、都心部のオフィスビルでもすでに空室が目立ち始めている、ということを業界関係者の間では耳にするようになった。
長期的に見て、こうした開発は功を奏するのだろうか。むしろ、長きにわたって負債を、企業や街に負わせるだけではないだろうか。そう思うと、なんとも言えない気持ちになる。
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