あれから1年「能登半島地震」で見えた"洗濯問題" 衣類の汚れや臭いは「被災者の精神的な負担」に

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●衣類は、繰り返し長く大切に使う

衣類の取り扱いを見直し、適切な洗濯やクリーニングを行いながら、繰り返し長く使う意識を高めることが重要です。これにより、平時でも災害時でも、衣生活にかかるコストを削減し、持続可能な生活につなげることができます。

DSATは災害時の洗濯支援の一環として、被災した衣類の再生支援を行っています。その中で、特に再生の依頼が多いのが「着物」です。ここで注目すべきなのは、なぜ着物の再生依頼が多く、ほかの衣類はそうではないのか、という点です。

着物は一般的な洋服と比べて高価であり、一着一着に価値があるため、簡単に捨てることができません。また、世代を超えて受け継ぐ文化があり冠婚葬祭や特別な場面で着るものとして、一時的な消費ではなく、家族の財産として扱われることが多くなります。そのため、少しの汚れや傷みがあっても、捨てるのではなく「直して使う」という選択がされやすいと言えます。

一方で、日常的に着る衣類はどうでしょうか? 

シャツやズボン、下着などは、比較的、安価で入手しやすいものが多いため、多少汚れても「買い替えればいい」と考えられがちです。特に災害時には、支援物資として新しい衣類が供給されることが多いため、「汚れたら捨てる」という行動が促進されやすくなります。

しかし、本来、衣類の価値は価格や用途だけで決まるものではありません。どの衣類ももっと衛生的に、状態よく、長く着られるものです。

洗えばまだ着られるのに、捨てるしかない

こうした状況を変え、衣類を大切にする意識を持つことが必要です。

災害時の衣生活を守るためには、平時から「洗えばまた着られる」という意識を持ち、衣類を適切に管理することが重要です。特に災害時には、限られた衣類を清潔に保つことが、衛生面・精神面の両方で大きな影響を与えます。

食べられるものを無駄にせず最後まで食べるのと同じように、まだ着られる衣類を簡単に捨ててしまう生活習慣を見直すことが、災害時の負担を軽減することにもつながっていくはずです。

洗濯は、単なる衛生対策にとどまらず、人々の生活の質を向上させるのに欠かせないものであることを多くの人に認識していただき、衣生活のあり方を皆さんに見直してもらいたいと思っています。

中村 祐一 洗濯家 国家資格クリーニング師

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なかむら ゆういち / Yuichi Nakamura

1984年3月1日生まれ。長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。「洗濯から、セカイを変える」という信念のもと、2006年から「洗濯アドバイス」という分野を切り開いてきたパイオニア。洗濯から考える、よりよい暮らし方の提案を行い、「衣・食・住」における「衣文化」の革新に洗濯の側面から取り組む。「洗濯王子」の愛称で、NHKなどのテレビ出演、日経新聞連載など各種メディアにも多数出演し洗濯のアドバイスを行う。全国各地のクリーニング店メンバーと共同で運営する、洗濯のキホンを伝える講座「ゼロから学ぶ洗濯」も好評開催中。

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