さて、NYタイムズが「デジタルの購読料」という「X」を定めた2010年代、彼らが競合としていたバズフィード社などのネット系ニュースサイトや新聞は「広告料収入」を主たる稼ぎとしていました。
このため、無料で読める記事・コンテンツでサイトの訪問者を増加させることや、企業との有償のタイアップ記事を増やすことに注力していました。
ですから、NYタイムズも「自社サイトの無料記事でアクセスを稼ぎ、有力なプラットフォームへ記事を提供して広告料収入で稼ぐ」という選択肢もあったわけです(現在でも広告料は一定の収益をあげています)。
また、広告料収入以外にも「ブランド力や知名度を活かした有料イベントやサービス」あるいは「物販」といった展開などもありえたでしょう。
事実、この時代に購読料でビジネスが成立していたのは、ウォール・ストリート・ジャーナルや雑誌のエコノミストなど少数派でした。
「自社の本当の強み」を信じて「X」を定めた
そんななかでも、「ネットで新聞を読むという習慣」が成立しつつあることを踏まえて、「良質な記事であれば有料のデジタル新聞の購読に商機がある」と考えたのでしょう。
これは、「『広告料の低下』というトレンド」をかなりシビアに読んでいたとも考えられますが、「『新聞をつくる』ケイパビリティ」への自負があった、つまりコンテンツに「絶対的な強み」を認識していたのが、大きな理由と考えて間違いないでしょう。
NYタイムズの「DXの成功」には、(前回見たように)「デジタル版への移行のうまさ」「資源のリストラクチャリング」などの進め方も確かに重要でした。
これらの成功要因を、(自社向きに)解釈したうえでマネることは難しいかもしれませんが、「『自社の本当の強み』を活かした『X』は?」というアプローチは、ほとんどの企業にとって手がつけやすいものでしょう。
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