節約の達人が買い物に「行く場所・行かない場所」 一番つまらないのは「見栄を張る」ことだ

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いっぽう、高級デパートに入っているヨーロッパの一流ブランドのどの店舗にも人はろくに入っていない。そのブランドの商品が買いたいのなら、何もデパートでなく本拠であるブランドショップへ行けばいい。となると、かれこれデパートは立つ瀬がないわけです。それにブランド物は高くて買えません。

高級食品よりも料理の腕前のほうが大事

デパ地下がいいと言っても、「このサラダを100gください」「こちらの唐揚げを100gで」と買っているとたちどころに5000円くらいになります。それでもよいという裕福なる人はかまわないかもしれませんが、つきつめると、デパ地下での食品買い、それはお金の無駄遣いではないかと私は指摘したいのです。たとえば、銀座あたりのデパートの食品売り場には、100g 3000円もするような高級牛肉を売っていたりしますが、それを買うのはごく一握りの人。

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我々庶民は「きっとこれを煮て食べたらうまいだろうな」と想像して心の中で垂涎の思いを味わうだけです。堅実なる生活者を以て任じている私は、そうした高級食品を買うことはしません。それよりも料理の腕前のほうが大切な要素です。そもそも大霜降りの和牛肉やら、大トロの鮪なんか、私はちょっとも食べたいと思いません。ああ、あんなに脂肪が差し入っていてはなあ……と、途方に暮れるような思いで見ているばかり。

さらにまた、郊外の自宅から銀座のデパートまで行くにはずいぶんな電車賃もかかります。車で行けばガソリン代も駐車代もかかる。「駐車代は買い物をすれば2時間までタダになります」と言うけれど、「5000円買えば無料」というような仕掛けですから、どっちみち何千円ものお金を浪費することになるわけですね。

私はそんな思いをして、銀座のデパートで高級な食材を買おうとは金輪際思いません。

ほどほどのお肉を、近所の店で買って、せいぜい丁寧に美味しく調理して食べることのほうが、ずっと「よい生活」だと思っているからです。

林 望 作家・書誌学者

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はやし のぞむ / Nozomu Hayashi

1949年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程満期退学。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。専門は書誌学、国文学。『イギリスはおいしい』(平凡社/文春文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞、『謹訳源氏物語』(全十巻、祥伝社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞。歌曲の詩作、能評論等も多数手がける。

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