(第33回)日本製造業が固執する現場信仰は正しいか?

(第33回)日本製造業が固執する現場信仰は正しいか?

これまで「研究開発、製造、販売のどの段階の利益率が高いか」について述べてきた。「スマイルカーブ」の理論は、製造段階の利益率は低いとする。標準的な工程なので、他企業での代替が可能だからだ。これを克服するには、安い労働力を使う大量生産が必要になる。他方で、新しい製品のアイディアや研究開発、ブランド力を利用した販売は、他に真似ができず、差別化が可能だ。だから、利益率が高くなる。

新興国の安価な労働力を用いる製造工程のコストダウンが行われるようになると、先進国企業は、その段階では太刀打ちできなくなる。だから、スマイルカーブの両端に特化すべきだ。ところが、日本企業は、製造現場こそが製造業の要だとして、この切り離しを拒否してきた。

ところで、垂直統合企業においてどの段階の収益が高いかは、部門ごとの収益性を明示的に計算しなければわからない。そうした計算のためには、コストの社内アロケーションが必要だ。しかし、その作業から恣意性を排除するのは難しい。声の強い部門が有利なようにコストが配分され、市場の評価とは異なったものになっている可能性がある。

それだけではない。垂直統合企業では、ビジネスモデルが歪んでいる可能性がある。そうなれば、開発と販売の強さを実現できなくなる。

例えば、製造現場は「品質がいいから売れる」と主張して、消費者の意向を無視した過剰品質の製品を作る。価格競争で負けて、売れないから、販売部門の成績が悪くなる。そして、販売部門の利益が低くなる。あるいは、現場の指示に従う研究開発しかできず、自由が奪われて、飛躍的な進歩を実現できない。

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