こうした中、入浴施設を作ったところで、その施設しか利用されなければ赤字になりかねない。コインシャワーや大浴場自体、設置施設以外にも管理や清掃が必要なうえ、光熱費や人件費など多くのコストがかかる。
つまり、収入面から金を“落とせない”トラックドライバーの事情と、トラックドライバーのために入浴施設を作りたくても収益にならないSAPA側の事情がうまくかみ合っていないのだ。
ドライバーのマナーに問題も
が、何よりも、施設増設の足かせになっていると感じるのは、「現場のモラルの低さ」である。現場のマナー違反は、彼らの労働環境改善のためにいくら周囲が動いても、それを一瞬で吹き飛ばす負の威力がある。
NEXCO中日本のSAPAを管理する「中日本エクシス」によると、シャワー施設における迷惑行為として、ドライヤーやシャワーヘッドの盗難、順番抜かしなどによる客同士のトラブル、大量の髪の毛や泥の排水溝詰まり、施設の破壊行為などが多く発生しているという。
が、なかでも深刻な問題行為がある。某県のSA関係者はこう話す。
「シャワールームに排泄物が残されていることがあるんです」
さらには、大浴場のある施設でも浴槽に排泄物が浮いていることがあるという苦情も。
「トイレ」問題においても、運送業界には“黄金のペットボトル”(尿入りペットボトルのポイ捨て)が、業界の社会的地位を奈落の底に突き落としている現実がある。ごく一部のドライバーの言動によってかなうものがかなわなくなり、結果、労働環境も社会的地位も悪化する現状は皮肉でしかない。
経営者向けの講演でドライバーのモラル教育の必要性を訴えると「そんな常識的なことまで口を出さないといといけないのか」という声も聞くが、門戸の広いドライバー職にはさまざまな価値観を持ち合わせた人が集まる。
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