郵政改革を「骨抜き」にする民営化法の見直し議論 背景に郵便の業績悪化、改正案は成立の公算

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この動きの背景にあるのが、日本郵政傘下の日本郵便の業績悪化だ。

2023年12月に示された総務省の試算によれば、2028年度には郵便事業の営業損益が1232億円の赤字に陥ると予想されている。昨年10月の30年ぶりとなる郵便料金の値上げがなければ、3439億円の赤字になるとも予想されていた。

郵便事業が低迷する原因は明白だ。デジタル化の進展に伴う郵便取扱数量の急減がそのまま業績に直撃している。2025年元日の年賀郵便配達物数も前年比34%減の4億9100万通まで落ち込んだ。

日本郵便の業績見通し

想定よりも悪いシナリオ

日本郵便経営企画部の囲貴博氏は「昨年10月の郵便料金改定で一時的に収益が改善する見通しだが、取扱数量の減少トレンドに変わりはなく、かなり厳しい状況」と話す。値上げによって1000億円以上の営業利益の改善を見込んでいたが、想定よりも「悪いシナリオで進捗している」という。

業績改善のためには値上げが必要だが、それに伴って取扱数量が落ち込み、さらなる値上げが必要になるという悪循環が生じている。自民党郵政族の柘植芳文参議院議員は「このままだと無限に値上げをしなければ(郵便事業の存続は)無理」とも話す。

日本郵便の業績低迷に伴い、グループの金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命)への依存度も増している。

中でも、ゆうちょ銀行は日本銀行による利上げを追い風に、最高益更新が続く見通しだ。1月24日に開かれた日銀決定会合で政策金利が0.5%に引き上げられたことで、ゆうちょ銀行では2030年度までに円金利だけで1兆円の収益増が見込まれる。金融2社で稼いだ資金を日本郵便の赤字に充てていく構図がますます鮮明になり、自民党の郵活連が金融2社の株式保有にこだわる理由もまさにそこにある。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事