郵政改革を「骨抜き」にする民営化法の見直し議論 背景に郵便の業績悪化、改正案は成立の公算
自民党で郵政民営化法の改正に向けた動きが本格化している。
すでに改正案の骨子となる「郵政事業を取り巻く環境の変化への対応策」をまとめており、「郵便局ネットワーク維持のための財政上の措置」を手当てすることなどが盛り込まれている。自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(郵活連)の議員らが中心となって、1月24日に招集された通常国会に議員立法で改正案を提出する見通しだ。
郵便局ネットワークを維持するための財政支援の財源は、政府が保有する日本郵政株の配当収入(年間628億円)や、ゆうちょ銀行が国庫に納めた休眠貯金(過去15年間で1875億円)が想定されている。「できる限り早期に」となっていた、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式の処分時期も見直し、「当分の間」は3分の1超の保有を日本郵政に義務付けることなども改正案に盛り込む。全株式の売却を目指す郵政民営化の方針とは逆行する動きだ。
総務大臣が「郵政改革に反対だった」
郵政民営化法をめぐっては、昨年12月に開かれた参議院総務委員会での村上誠一郎総務大臣の発言も、業界関係者の間で物議を醸している。
同委員会で、日本郵政グループ労働組合(JP労組)の組織内議員である立憲民主党・小沢雅仁参議院議員が「郵便の責務を履行するための経営財源が枯渇し始めている。(中略)総務省としてしかるべき支援をやっていただかないと」と述べ、村上大臣の所感を求めた。それに対し大臣は「個人的見解」と前置きした上で、「(日本郵便の)現状を聞いて非常に驚いている。私自身は郵政改革に反対だった」と発言した。業界関係者は「総務大臣までもがあんな発言をするとは」と驚きの声を上げる。
自民党は昨年行われた衆院選の政権公約に、郵政民営化法の改正を目指すことを盛り込んでいた。「民間にできることは民間に」というスローガンの下、2005年以降進められてきた郵政民営化の流れは、改革を進めてきたはずの自民党によって「骨抜き」にされようとしている。
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