あんなに愛された街が…「立石再開発」微妙な現状 怒涛の再開発計画掲げる葛飾区に住民が疑問

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となると、今後も区が高騰する建築費を負担し、完成後の建物を高額で購入するのはもちろん、場合によっては再開発組合に加わった地権者が建築費等の不足分を埋めるために賦課金を支払う羽目になることも想像される。

その場合、区も大口の地権者であることから賦課金の支払いは免れないだろう。税金を投入して再開発を行い、税金で保留床を購入、さらに税金で賦課金を支払うわけで、素人の私にはこの事業による区のメリットがどこにあるのかがよくわからない。

加えて京成立石では南口西地区、南口東地区でも再開発事業が行われており、西地区では都市計画決定、東地区では再開発組合の設立まで進んでいる。

南北3つの開発全体では1800戸超の住宅が供給される計画で、残る頼みはこれらの住宅が想像以上の高値で売れることだが、仮に全戸が1億円で売れても1800億円余。3棟のタワーマンションを含む3つの再開発の建設費としては足りそうにない。

愛された街をタワマン街に変える以外になかったか

ちなみに現在の立石駅北口一帯は白く、高い塀で覆われており、かつての賑わいは完璧に失われている。駅の高架化で便利になると言われていたはずだが、再開発に合わせてか、駅の完成も2031年に延びており、あと数年は空かずの踏切状態が続く。

南口は今のところまだ以前の姿ではあるものの、北口の工事の影響で訪れる人は減少しているようだ。多くの人に愛された街をより便利で安全な街にという意図はわからないではないものの、これだけの税金を投じてどこにでもあるタワマン街を作る以外に手はなかったのか。動き始めた再開発を止める手立てのない今の状況がはたして正しいのか。考えていく必要があるのではなかろうか。

(*)2024年10月8日の区議会配布資料では2022年、2024年の支出については再開発組合の資金計画案を掲出、2030年までのシミュレーションについては区の試算を使っており、費目が一致していない。だが、シミュレーションに際して再開発組合の数字(一部内部資料)を使っていることからここでは分かりやすくするため、建設費として統一した。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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