「金利ある世界」で一つの「財政の神話」が終わった 国債の利払い費が増加に転じ、政策的経費を圧迫

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政府は、2025年度の物価上昇率を2%と見込んでいるから、実質的な税収増は2.6%にとどまる。その増収のうち、1.2兆円は法人税からのもので、消費税や所得税(定額減税分を除く)の増加を上回っている。

税率を上げずとも増える自然税収が大きいのだから、それは国民に還元せよというが、消費税や所得税の増加はさほど大きくない。しかも、ここでさらに減税すれば、需要を刺激して物価上昇圧力を高めることになる。結局、賃金上昇が物価上昇を上回りにくくなって悪循環となる。

公債依存度が27年ぶりに25%を割った画期的予算

この過去最高の税収を背景に、一般会計の国債発行は28兆6490億円と、2024年度当初予算よりも6.8兆円減らせる見込みである。これにより、歳出総額に対する国債発行額の比率である公債依存度は、2025年度予算政府案では24.8%となっている。

24.8%という公債依存度は、歳出の元手を借金に頼る割合は4分の1を割るところまで下がっていることを意味しており、25%を下回るのは当初予算ベースでは1998年度以来のことで、画期的である。

「こんなに国債発行を減らせるなら減税せよ」というのは将来の国民(もちろん今を生きる国民も含まれる)の税負担を増やすことに他ならない。税収が好調であるうちに国債発行を抑えることで、前述した利払い費をこれ以上増やさないように抑えることができ、将来の税負担を抑え、政策的経費に財源を回す余地を広げることができる。

石破内閣は、この予算案をどのように通してゆけるだろうか。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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