阪神・淡路大震災30年「都市直下地震」怖さと備え 都市部に住む人が押さえたい「5つのポイント」

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5. 屋内では家屋の転倒等の被害を防止する

耐震性が確保でき、立地のリスクを知ったうえで、屋内で行う重要な地震防災がある。それは、家具が転倒・落下などすることで負傷、最悪は死亡に至ることを防ぐことだ。

阪神・淡路大震災は早朝の5時46分という明け方に発生し、まだ眠っている方も多かった。寝ている場所に家具などが倒れてきてしまうと、特に大きな揺れで揺さぶられている中では防御や避難もとりづらい。

建築学会によると、阪神・淡路大震災では全体の約6割の部屋で家具が転倒して部屋全体に散乱したとされる。また、負傷者の半分近くは家具の転倒等によるものという報告もある。地震時に負傷してしまうと、当然救急車は呼べないし、治療が遅れることもある。

手足などが挟まれる状態が続いてから救助されると、壊死した部分の毒素が血液によって全身をめぐる「クラッシュ症候群」が起きる可能性がある。阪神・淡路大震災では外傷傷病者全体の13.7%にあたる372人がクラッシュ症候群を発症し、そのうち50人が亡くなったという。

日常であればすぐに救助・治療が受けられるような負傷でも、被災時では対応が難しく命を脅かす事態も想定される。

一方、家具の転倒防止というとまず家具の固定などを思い浮かべるだろう。しかし、その前にまずは家具の配置や収納方法を考えることが重要だ。

例えば寝ている場所や普段過ごしている場所に倒れてくる家具がなければ、そもそも就寝時に倒れてくることもなく、固定も不要だ。いくら家具を固定していても、不十分な固定で転倒したり、扉が開いて収納物が落下したりしてくることもある。

そのため、まずは寝ている場所や普段過ごしている場所に倒れてくる家具を置かないような家具配置、次にドアや廊下、通路等避難ルートをふさがない家具配置が望ましい。

自宅の耐震性や立地のリスクを見直して

これら阪神・淡路大震災の5つの教訓から、今後発生が懸念される、都市直下の地震において命が失われず、負傷をする可能性を減らしてほしい。そして、自宅が被災して避難する可能性が高いか、低いかも考慮してほしい。

また自宅の耐震性が低い場合や、津波など立地リスクがある場合は被災後、避難所で暮らさなければならない可能性が高い。この場合は日ごろから避難リュック等の準備と避難先、ルート選定を考えておいてほしい。

一方、立地のリスクが低く、十分な耐震性がある家屋であれば被災後も住み続けられる可能性が高い。その場合は自宅を安全な空間にして在宅避難を継続できるよう、備えておく必要がある。

自宅の耐震性や立地のリスクを考慮した備えこそが、今後の地震防災に重要であると考える。

横山 芳春 だいち災害リスク研究所 所長・地盤災害ドクター

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よこやま よしはる / Yoshiharu Yokoyama

地形と地質、地盤災害の専門家。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程を修了、関東平野(茨城県南部全域の常陸台地)の地形・地質のなりたちに関する博士論文で博士(理学)の学位を取得。早稲田大学理工学総合研究センター勤務ののち、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門(旧・通産省工業技術院 地質調査所)などで研究に従事。現在は、さくら事務所が運営するシンクタンクだいち災害リスク研究所所長として、災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。地盤災害のプロフェッショナルとして活動している。

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