パナソニック「AI関連売上高を10年で3倍」の覚悟 このままだと「化石になってしまう」と楠見社長

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

パナソニックはアンソロピックとの提携で自社にない生成AI関連のノウハウを補うほか、生活(暮らし)の領域をメインターゲットにすることで並み居る競合との差別化を図ろうとしている。

今のところ、グーグルやアップルが開発を急ぐエージェント機能を搭載した生成AI搭載スマホの主眼は、予定調整や乗り換え検索など、どちらかと言えばビジネス用途がメイン。エヌビディアも企業向けが主体だ。

家電を中心に生活領域に強みを持つパナソニックとしては、他社がまだ参入していない領域で先行してサービスを立ち上げることで、差別化を図る考えだ。

パナソニックは先述したファミリーコンシェルジュサービスのヨハナを2021年以降、アメリカと日本で展開し、暮らしに関するニーズを蓄積してきた。ヨーキー氏は「ヨハナで合計100万時間以上の時間が節約でき、利用者の65%がヨハナによってさらに質の高い時間を確保できた」と自負する。

CES2025でのパナソニック
ヨーキー氏(右)は「サンドイッチ世代」をジェスチャーで示した(記者撮影)

しかしヨハナでは、アプリの裏側で人間が予定調整などを行っていたために利用料を引き下げることができなかった。また、サービスの利用によって生まれた時間に何をするべきかという提案まではできていなかった。

ウミは「ヨハナで得た学びを踏まえてヨハナよりも多くの人が使える価格」で提供される。収益源という観点では、サブスクリプションとして利用者から徴収する料金と、プラットフォームの利用料として接続先のサービスから得る手数料の2つになるという。

AIをテコに成長軌道に戻れるか

創業以来手がけてきた「暮らし」とAIの組み合わせによる新たな戦略が成功するかどうかは、パナソニックの浮沈を占うことになりそうだ。

2021年6月に社長に就任した楠見氏が最初に定めた2022~2024年度の中期経営計画は、3つある数値目標のうち2つが未達となる公算だ。戦略的な投資領域と定めたEV向けのバッテリーと欧州向けが中心の空調事業、ブルーヨンダーの3事業の成長が想定よりも遅れていることが主な要因だ。

この間、同業他社は不採算事業からの撤退やM&A(買収・合併)を経て、それぞれの得意分野へと経営資源を集中する動きを続けてきた。それに伴い株式市場での評価も高まっている。ソニーグループの株価も昨年12月に25年ぶりとなる史上最高値を更新した。

ただ、生成AIの領域で確固たる地位を築くことができている日本企業はまだいないのも事実だ。市場からの評価で出遅れ感のあるパナソニックは、他社に追いつき追い越すことができるのか。

■楠見社長「将来への危機感の裏返しだ」

現地時間1月8日に楠見社長が報道陣の合同取材に応じた。主な質疑応答は以下のとおり。

CES2025でのパナソニック
楠見社長「目標は2~3年前倒しで達成したい」とも述べた(記者撮影)

――このタイミングで「パナソニック・ゴー」を発表したのはなぜですか。

AIが進化していくにしたがって、既存の事実をベースに何かを生成するような作業は人からAIに置き換わっていくだろう。これによって、顧客との接点やソリューションも人を介さないものが増えてくる。

AIとそれに関連する技術を自分たちの力にしないと、パナソニックが化石になってしまうという危機感がある。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事