その当時の私は、中国の経済成長の影響を軽視していたわけではない。実際、2012年には、東洋経済新報社から『日本式モノづくりの敗戦』という書籍を刊行し、中国企業の重要性について述べた。その本のサブタイトルを「なぜ米中企業に勝てなくなったのか」としたのだから、中国経済の成長は重視していたつもりだ。しかし、実際に生じた変化は、予想を遥かに超えた。
日本人の思考法と基準・尺度が変わらなかった
このように、世界はこの10年間に驚くほど変わった。それにもかかわらず、日本は変わらなかった。日本国内では、この10年間、時間の進行が止まったようだった。そして、10年前の思考法と基準・尺度から脱却することができなかった。
最近、それを痛感させられるニュースが3つあった。
1つは、日産とホンダの提携を伝える新聞記事だ。仮に提携が成立すれば、世界で販売台数がトヨタとフォルクスワーゲンに次ぐ世界第3位のグループが登場すると報道されている。これは、自動車の販売台数だけにとらわれた発想だ。
しかし、時価総額で見れば、テスラは1.483兆ドルで世界第8位(2024年12月25日現在)。それに対してフォルクスワーゲンは、463.5億ドルで世界第425位。まるで比較にならない。
両社の時価総額の差が示しているのは、自動車がEVと自動運転車へ大きく変化しつつある事実だ。それを考えれば、販売台数が世界第3位という尺度が意味を失っていることは明らかだ。
もう1つは、シャープ関連のニュースだ。シャープは2016年に債務超過に陥り、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った。その後、シャープについてのニュースを聞くことがなかったのだが、2024年5月に、テレビ向け液晶パネルを生産する堺工場を停止し、大型液晶パネルの生産から撤退するとのニュースが伝えられた。
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