GDPの規模より重要なのは、1人当たりGDPで表される国の豊かさだ。G7諸国の1人当たりGDPを見ると、2015年においては、日本はG7中で第6位だった。2000年には日本はG7諸国中のトップだったので、2015年時点ですでに日本の凋落ぶりは顕在化していたのだが、さらに驚くのは、2015年と2024年との比較だ。
この間に、日本以外の国の1人当たりGDPは、大きく増加している。アメリカの場合には、実に50%の増加だ。ヨーロッパ諸国も、イタリア以外は、20%台後半から40%台の増加になっている。
ところが、日本の1人当たりGDPは、この間に約5%減少している。つまり、この10年間、日本経済は歩みを止めてしまったのだ。
世界各国が変わる中で、「止まったままだった日本」
成長しているのは、G7諸国だけではない。アジア諸国の成長はもっと顕著だ。日本は、2024年に一人当たりGDPで韓国や台湾に抜かれた。こんな事態になるとは、10年前には考えたこともなかった。
この10年の間に、世界の多くの国々が成長を遂げたのだ。そして、日本は変わらなかった。だから日本の相対的な地位が低下したのだ。
「同じ場所にとどまるには、一所懸命に走らねばならぬ。もし別の場所に行きたいのなら、その倍の速さで走らねばな!」
これは、ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』で、赤の女王が発した言葉だ。私はこれを「赤の女王の相対性原理」と呼んでいたのだが、最近では、キャロルが21世紀の日本を予測して、日本人に向けて発した警告ではないのかと思えてきた。
この間に世界経済に起きた大きな変化の1つは、中国経済の成長だ。しかし、2015年版『戦後経済史』では、中国について、中国が工業化に成功したことを、わずか数ページ書いたに過ぎない。
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