江戸のメディア王・蔦重を駆り立てていた原動力 NHK大河「べらぼう」主人公に学ぶ仕事のコツ

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もちろん彼を慕ってくれる人たちも多かったものの、やはりどこか「孤高の人」だった蔦重にとって、孤独を極めるということは、捨て身の自由さを手にできる反面、漠然とした寂しさを感じさせるものだったのかもしれません。

また、幼少期から男女の愛憎を見て育った蔦重にとって、吉原通いの殿方が花魁に軽はずみに行ったリップサービスによって、彼女が半狂乱になる、あるいは逆に、遊女の手練手管(てれんてくだ)に客が翻弄される……などといった事態も、日常的な風景。人の言葉を信用して馬鹿を見るのは自分だと、幼い時分に学んだのかもしれません。

そういったなかで、そもそも人に期待しない、もし誰かに裏切られて傷ついたとしたら、期待した自分を恥じること……そんなマインドが醸成されていったのです。

二度と騙されないように用心すること

「人に裏切られたら、馬鹿だった自分を呪う」。これは決して、何かあったときに自分を責めろということではなく、その真逆です。大切な自分が二度と同じ目に遭わないよう、自己防衛するための賢い術なのです。

たとえば会社で、あなたの渾身の企画が、同僚に盗まれてしまったとします。

そのとき、悪いのは相手であることは大前提ですが、自分自身にも隙がなかったか、今一度振り返ってみるのです。

うっかり相手を信用して、企画の概要を話してしまわなかったか。誰もが目につくところに、内容が網羅された書類を置いてしまっていなかったか。

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あるいは、この世で自分だけにしかできない企画であれば、そもそも相手に真似されることもなかったのではないか……そんなふうに、思いを巡らせてみるのです。そして二度と同じ目に遭わぬよう、徹底的に策を凝らしていきましょう。

理不尽な目に遭ったとき、自分の何がいけなかったのだろう?と振り返るのは、いわば傷口をえぐるような行為です。できることなら蓋をして、目を背けたくなるのは当然ですよね。

でもそこをぐっと堪えて勇気を出し、自分のあり方を見つめ直せる人は、どのような経験も力に変えていくことができます。

「運が悪かったんだね、どんまい」で終わらせず、歯を食いしばってでもセルフフィードバックができる人こそ、一生進化し続けられる人なのです。

車浮代 時代小説家、江戸料理文化研究所代表

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くるまうきよ

浮世絵をはじめとする江戸文化、江戸料理に造詣が深く、さまざまな媒体を通じて江戸文化の魅力を現代に伝える。1964年大阪生まれ。大阪芸術大学卒業後、東洋紙業でアートディレクター、セイコーエプソンでデザイナーを務める。その後、第18回シナリオ作家協会「大伴昌司賞」大賞受賞をきっかけに会社員から転身、映画監督・新藤兼人氏に師事し、シナリオを学ぶ。現在は作家の柘いつか氏に師事。ベストセラーとなった小説『蔦重の教え』(当社/双葉文庫)のほか、『Art of 蔦重』(笠間書院)、『居酒屋 蔦重』(ORANGE PAGE MOOK)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人』(PHP文庫)など、著書多数。2024年春、江戸風レンタルスタジオ「うきよの台所 ─Ukiyo’s Kitchen─」をオープン。江戸料理の動画配信も行っている。

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