江戸のメディア王・蔦重を駆り立てていた原動力 NHK大河「べらぼう」主人公に学ぶ仕事のコツ

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当然のことながら、蔦重もロックオンされます。幕府はこの頃から、露骨に蔦重をターゲットにした掟を定め、それによって彼を追い詰めていこうとしましたが、当の本人はまったく意に介しませんでした。

むしろ、政権側から目の敵にされ、厳しく取り締まられるほどに、ますます燃えていったのです。もはやトンチ合戦さながらに、「これがダメなら、じゃあ次はどうする?」と、巧みに抜け道を探っていきました。

制圧に対し、真正面から戦いに挑む蔦重の姿は、日々倹約を強いられ、窮屈な思いをしていた江戸っ子たちにとって、心躍る最高のエンターテインメントだったことでしょう。 両者の戦いが激化するほどに、「蔦重は次なにをやってくれるんだ⁉」 「蔦重はただじゃ転ばねぇ!」と、江戸っ子たちは次の一手を楽しみにするようになり、さらに熱く蔦重を応援していったのです。

誰しも生きていくなかで、不条理な出来事に遭遇することはあるものです。そんなときはその境遇を嘆いたり、恨み言を口にしたりするだけで終わらせず、その状況を逆手にとってやる、というくらいの図太さを持ってみてください。

転ばされた分は100倍にして取り返す。その精神こそまさに、「自分の人生を生きるんだ」と腹を括った人間が持てるものなのです

蔦重から離れていく仲間や奉公人も

以前私が上梓した時代小説『蔦重の教え』(飛鳥新社/双葉文庫)に出てくる教訓のひとつに、「人を見たら悪人と思え」というものがあります。いわゆる性悪説です。

なんとも無慈悲な言葉に聞こえますが、これは実は、すべてを誰かのせいにする他責思考によるものではなく、あくまで自分の気を引き締めるための言葉なのです。

信じていた人に裏切られたときのショックは大きいものです。

「自分の部下くらいは信じてやりたいが、店番を任せれば売上を横領して女に貢ぐし、きつく叱れば腹いせで井戸に売り物を放り込まれるし……」

蔦重の身にそういったことが起きるのも、一度や二度ではありませんでした。

また、蔦重の強すぎる信念についていけず、去っていく仲間や奉公人も少なくはありませんでした。

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