ホンダ「シビック」がマイチェンして人気化した訳 新設定のMT専用「RS」のマニアックな世界観

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2モーターハイブリッドのe:HEV(左)は従来の1グレードから2グレードになった(写真:ホンダ)

実際の走りも、まさに狙い通り。普段使いから軽快、そして爽快なものに仕立てられている。加速の小気味良さはこれまで通りだが、シフトアップの際にはエンジン回転数がスッと下がり、リズム良く次のギアに入れることができる。

正直に言うと、従来モデルにだってそれほど不満を感じていたわけではなく、最近のエンジンはこんなものだろうというくらいのものだった。フライホイールの軽量化だけでこれほど切れ味が増すとは、ちょっとした驚きだった。

一方、シフトダウンの際には自動で空吹かしが入り素早く確実に変速できる。MTの煩わしさを取り除き、楽しさだけが抽出されている。もちろんヒール&トゥは大得意、助けなんて要らないという人は、システム設定の画面からレブマッチシステムをオフにすることも可能だ。

フットワークも、クルマとの一体感の強さが印象的だ。操舵感は心地よく、ロールが適度に抑えられたハンドリングも胸躍らせる。特に右に左に切り返すような場面での身のこなしの良さには、思わずペースが上がってしまう。

シビックRSが表現しているのは、原初的と言ってもいいクルマを操る楽しさ。今の時代に、こういうクルマが支持されたことには嬉しい気持ちにさせられた。いや、こういうクルマを出してくれたことには、と言うべきか。とりわけ走りの話になると、ついやり過ぎてしまいがちのホンダが、速さは程々に味を追求した結果が、いいかたちで出たことは間違いない。

シビック自体の改良もツボ

RSの話ばかりしてしまったが、シビック自体の改良もツボを突いている。まず、2モーターハイブリッドのe:HEVは従来の1グレードから、より幅広いユーザーにアピールするべくLXとEXの2本立てになった。明るいグレーの内装が追加されたのも嬉しい。

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装備の面ではGoogleの搭載がトピックだ。シビックが初搭載ではないが、地図、アプリなどを利用できるのはもちろん、音声操作によってナビゲーションやオーディオ操作、更に温度調整など車内の機能操作も行なえるようになったのは大きい。特に目的地設定などは音声で行き先を言うだけで済んで煩わしさがなく、若干大げさに言えば、クルマでの移動体験そのものの変革だなと感じたほどである。

まさしく、かつては国内市場からの撤退も余儀なくされたシビックの復権と言っていいだろう。私としては、同い年の仲間が再び元気になってきたということでもあり、何とも嬉しいのだ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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