コンプラ時代に「ドッキリGP」はなぜ"笑える"のか 逆風のバラエティ、それでも笑いを諦めない矜持

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実際にドッキリ番組は、その演出方法からも、コンプライアンス違反や行きすぎた内容ととらえられ、批判やクレームの対象になるケースが多い。それは『ドッキリGP』も例外ではない。それでも中川さんは、コンプライアンス時代であってもドッキリ番組を続けていくべきだと考えている。

フジテレビ
中川将史(なかがわ・まさふみ)/1980年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、2002年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』のほか、2004年から18年の番組終了まで『とんねるずのみなさんのおかげでした』、2018年から2021年まで『さんまのお笑い向上委員会』など、数多くの番組を担当。現在は『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』『何か“オモシロいコト”ないの?』『お笑いオムニバスGP』で総合演出を務める(写真:©️フジテレビ)

「あらゆるジャンルの番組に好き嫌いがあるわけで、ドッキリも好きな人、嫌いな人といると思います。

番組を作る際、僕の最大目標は『視聴者の皆さんに腹筋が崩壊するほど笑ってもらいたい』という一点だけ。どんなに過激なことや派手なこと、斬新なことをしても笑えないものは失敗なんですよ。『可哀想、笑えない』という声が強すぎるものは決して面白いものではない。

『ドッキリGP』には否定的な意見があれば好意的な意見もあります。双方の声をしっかり受け止めて、僕らなりの“スパイシー料理”を視聴者の皆さんにお届けしていきたいですね」(中川さん)

「痛みを伴う笑い」のとらえ方

2022年4月、放送倫理・番組向上機構(BPO)によって、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」番組は、「青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」という見解が発表されている。これは『ドッキリGP』をはじめとしたドッキリ企画を売りにしている番組にとっては無視できない話題だ。

「この“痛みを伴う笑い”というのが、一時期すごくネガティブな状況になりましたけど、個人的には“痛みを伴う笑い”=完全NGではないと考えています。

日常の中でも、人が転んでちょっとヒザを打って笑っちゃうことってあるじゃないですか。逆にヒザを打っちゃったほうも、痛いけど周りが笑っていたらなんかうれしくなっちゃった、みたいな。

笑えるという範疇であれば、“痛みが伴う笑い”はあってもいいと思っています。やっぱり身体を張った笑いは面白いですし、それがダメとなると困る演者さんもたくさんいます。ただ、やりすぎてドン引きされるのはダメ。そのギリギリのラインを守りながら、今後もチャレンジしていきたいですね」(中川さん)

中川さんが語るように、ドッキリはスパイシー料理なのかもしれない。だが辛くて食べられない代物では、料理として成立しない。辛くても美味しいからこそ、スパイシー料理ではないだろうか。

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