「多様性尊重」で逆に炎上、残念ケース増える背景 「つくり出された炎上」多発、企業の対応も変化

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西山:これまで炎上というのは、何千件、あるいは何万件という批判がSNS上で自然に巻き起こってくるものでした。でも近年は、賛否両論がちょっとだけ起きている案件についても、いわゆる「こたつ記事」で「批判殺到」「炎上」みたいに書かれ、それをきっかけに議論が沸騰していくケースが増えてきました。

例えば、丸亀製麺の事例です。上戸彩さんがうどんをすする音について「ヌードルハラスメントだ」という意見が出てきました。また、花王ハミングの動画広告で描かれている夫婦については、妻と夫の年齢差が大きすぎる点に違和感があると指摘されました

ただいずれのケースも実態を調べてみると、実際に批判している人はそんなに多くありません。一部の意見を切り取った「こたつ記事」によって、炎上がつくり出されているといえます。

企業側の対応も変わってきました。これまでは炎上したら即、その広告やキャンペーンを取り下げる場合が多かったのですが、最近では「これはつくられた炎上では」と考えるようになってきています。自分たちが本当に悪いことをしたのか、検証してから対応するという流れです。

企業に求められる対応は高度化

倉沢:各社とも「炎上慣れ」をしてきて、ちゃんと対処できるようになってきているということでしょうか。

西山:大手企業に限っていうと、その傾向はあると思います。ただやはり、その他多くの会社は炎上にさらされると「どうすればいいんだ」とあたふたしてしまいます。対応自体が高度化している点も無視できません。

倉沢:高度化といいと?

西山:判断が難しくなっているということです。先ほども触れたように、昔であれば炎上した場合「自分たちの発信に何かしら問題があったのだろう」と判断することができたのですが、今は企業側が問題になるようなことをしていないにもかかわらず炎上する、あるいは炎上していないにもかかわらず炎上したと書かれる、みたいな現象が起きているわけです。

それに対して企業側がどう判断するのか。これは以前に比べて難しい部分が増えていると感じます。

撮影・編集:田中険人
西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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