NY進出の一流寿司職人「超ハングリーになった」訳 伝統を守るモダニスト、中澤圭二氏の矜持

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中澤がニューヨークに招いたのは、「すし匠さわ」時代からの中澤に憧れていた、5番街にある「アンダーズホテル」を所有する日系企業の重役だった。ホテルの1階にレストランを作るチャンスを打診され、中澤はマンハッタンに移り住んだ。

2016年にホノルルで店を構えたとき、中澤は地元産のヤシの実と生姜のピクルスを混ぜ合わせたものを各客に提供した。マンハッタンでは、ニューヨーク産のリンゴを酢漬けにしたものを使っている。

「彼は伝統主義者ですが、同時にモダニストでもある」と、セブルスキーは話す。「彼は基本を自分の場所と時代に合わせることをおそれることがない」。

「寿司を作るよりも、人を作るほうが好き」

真面目でほとんど学者的な中澤は、自分自身を職人であり教師であると考えている。実際、彼は「寿司を作るよりも、人を作るほうが好き」と語っている。『鮨屋の人間力』の著者でもある中澤が最近麻布台ヒルズにオープンしたレストランは料理人が寿司と日本の伝統工芸を学ぶトレーニング・アカデミーを兼ねている。

妻の真紀子はそこで書道を教えている。娘の千夏はニューヨークのレストランでソムリエをしている。彼女は魚に触ることは許されていないが、「すし匠」のデザートである、3種類の砂糖から作られたシロップで冷やした透明な葛粉の麺の後、お茶を飲みたい人のために抹茶をたてる役割を担っている。彼女は「すし匠」で働く約14人のうちの1人で、従業員と客の比率は市内のほかの寿司屋よりもはるかに高い。

葛粉を使ったデザート(写真:The New York Times)

「多くの店は個展のように営業している」と中澤は言う。彼の哲学は 「専門家集団」を結成することだ。そうすれば、「もっと大きなものを作ることができる 」。

(執筆:Pete Wells記者)

(C)2024 The New York Times 

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