chocoZAPが"数百種類の広告"を用意した深い理由 市場の「不確実性をコントロールする」重要性

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おそらく従来のトップダウンの戦略であれば、自社ブランドの伝えたいメッセージを固定し、そのメッセージを一貫してアピールした認知施策によって顧客を獲得しようと考えてしまうでしょう。

しかしchocoZAPは、あらゆる側面からの大量のコミュニケーションによって、消費者は何を求めていて何を求めていないのかをリアルタイムにデータを収集。その中で自社収益性、市場規模性、他社優位性の最大公約数を、サービスの便益を享受できるあらゆる「個」の集合体から導き出すアプローチを実践したのです。

リアルタイムで得られるデータを市場からのフィードバックと捉え、「反応が高いサービスだから強化する」や「収益性が低い訴求だから優先度を下げる」「デジタルに向かないターゲットだからチラシでアピールする」といった戦略自体をアップデートし続けたのです。

このchocoZAPのアプローチを単なる膨大な「A/Bテスト」として認識した人もいるかもしれません。しかし、まさにこれは市場の不確実性をコントロールするために用いられた意図的なボトムアップ戦略です。これにより、「サービスを選んでくれる人」「選んでくれない人」「選んでくれる可能性がある人」をテストの中から見つけ、整理し、消費者の解像度を高め続けたのです。

「瞬間的な優位性」を生み続ける

『顧客を見れば、戦略はいらない 解像度を上げるボトムアップマーケティング』書影
『顧客を見れば、戦略はいらない 解像度を上げるボトムアップマーケティング』(日経BP)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

一般的なトップダウン戦略は、目的を達成するために「自社は何をすべきか?」という自社視点で戦略を設計して忠実な実行を重視し、いつの間にか自社がやりたいことを戦略と言い換えてしまうことも起こってしまいます。しかしボトムアップ戦略は、「消費者に対して何ができるのか?」という手持ちの手段から最適解を発見していく問題解決型アプローチです。そしてトップダウン戦略では予測できない領域を、デジタルを活用し、今この瞬間の「事実」から少し先の未来を予測することで不確実性がコントロールできるのです。

これからの時代、デジタルマーケティングを活用しないという選択肢はないと思います。その際、デジタルを単に販売チャネルの一つといった捉え方で活用するのはあまりにももったいないです。デジタルの圧倒的利点である「リアルタイムで得られる市場からのフィードバック」、つまりデータをフルに活用することで、市場のニーズに適応し多くの「瞬間的な優位性」を生み続けることが可能になるのです。

川端 康介 マテリアルデジタル取締役

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かわばた こうすけ / Kosuke Kawabata

2004年、EC事業スタートアップに参画。デザイン/広告/プロダクト開発などの知見と技術をベースに、2010年に株式会社nano colorを設立。10年以上EC業界で顧客コミュニケーションや事業戦略を支援。WHO×WHATを軸にブランディングとマーケティングを分断しないプランニングとクリエイティブを設計することを得意とする。宣伝会議の非常勤講師も務める。また、かつては学校法人HAL非常勤講師、株式会社千趣会のマーケティング子会社Senshukai Make Co-でクリエイティブチームマネージャーも務めた。23年10月に株式会社マテリアルデジタルに参画し、同社取締役に就任。

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