chocoZAPが"数百種類の広告"を用意した深い理由 市場の「不確実性をコントロールする」重要性

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一方、戦略そのものにボトムアップのアプローチを組み込むことで、それらの懸念を解消することが可能になります。ボトムアップのアプローチは、市場や顧客の変化といった、予期しない問題や状況などに対応しながら戦略を設計します。硬直性が強い計画的なトップダウン戦略に対し、計画を進める中で予期せぬ事態に対処した結果、形成されたものがボトムアップ戦略です。

『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』(クレイトン・M・クリステンセン著/翔泳社)には、こんなエピソードがあります。

1960年代、ホンダはアメリカのオートバイ市場に進出します。しかし品質の問題もあって、販売は困難を極めました。

ある日、ホンダの社員が業務用に使っていた小型バイク(スーパーカブ)にアメリカ人が興味を示し、この偶然をきっかけにホンダは小型バイク市場に注目し始めました。その結果、ホンダは小型バイク市場で大成功を収めたのです。

1960年代というかなり昔のエピソードですが、ここで重要なのは、ボトムアップの戦略は、決して無計画な戦略なのではなく、トップダウンの戦略があった上で、予期しない状況をポジティブに捉え、市場のニーズに適応したということがポイントです。大型バイク以外が売れることは計画通りではなく失敗である、という判断をしてしまっていたら、この成功は生まれていないのです。

当時と比べてますます未来の予測が難しい現在において、トップダウンの戦略の緻密さ故の硬直性や、変化への不適応といったリスクをイメージしていただけましたか。

このリスクを避けるには、いかに戦略においての余白を担保し、ボトムアップの戦略アプローチを意図的に生み出すか。それによって不確かな未来を予測するのではなく、「不確実性」をコントロールできるかが、今の戦略には求められているのです。

意図的にボトムアップ戦略を組み込む

予測ができないのであれば、事実を積み上げて不確実性を低減するしかありません。そのためにボトムアップ戦略を意図的に取り入れ、市場を「予測」するのではなく、「不確実性」をコントロールするのです。この意図的なボトムアップ戦略の設計は、ウェブマーケティングとの相性が非常に良く、市場からのフィードバックをリアルタイムで得られるので、不確実性のコントロールにはうってつけです。

一時期、マーケティング業界では「chocoZAP」(RIZAP)が広告バナーやランディングページを数百種類以上も作成し、高い注目を集めていました。

多種多様なそれらの広告クリエイティブは、「ビジネスパーソン」や「若い女性」など想定される人物像ごとに使用する写真や描写を変え、市場で発生しているであろうニーズがイメージできる状況やシーンが描かれ、今までジムに行かなかった人たちが得られる便益を事細かく分類したクリエイティブで運用されていたのです。

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