物言う株主エリオットが狙った東京ガスの「急所」 低株価の原因見抜き、還元、資産売却へ圧力

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東京ガスの不動産事業の象徴である「新宿パークタワー」。上層階には超高級ホテルの「パーク ハイアット 東京」が入居している(撮影:筆者)

東京ガスが突如、「株主重視」へ姿勢を転換した。

東京ガスの笹山晋一社長は2024年10月30日、証券アナリストや機関投資家を前にした2024年度第2四半期決算説明会の場で、いつになく歯切れがよかった。

「中期経営計画(2023~2025年度)における各指標のうち、ROE(株主資本利益率)8%を最も優先課題が高いものとして認識している」

「中長期的にはさらにその水準を超えるレベルを目指していく」

ROE8%は東ガスが現中計の最終年度である2025年度に達成を目指している目標数値だ。そのうえで笹山社長はさらに踏み込んだ。

「(2025年度の)ROE8%達成に向けては1000億円程度の自己資本の圧縮と、中計で掲げたセグメント利益1500億円を上回る1800億円程度の利益レベルが必要だと認識している」

経営トップの意欲的な発言に加え、この日、1700万株および400億円を上限とする自己株式取得を発表したことで、東ガスの株価は翌日以降、1割ほど値上がりした。

株式市場も驚いた、東京ガスの「変貌」

これまで株式市場での東ガスの評価は決して高いとは言えなかった。

東ガスは2021年度および2023年度の2度にわたり、総還元性向(当期純利益に対する配当と自己株取得の割合)を6割から5割、5割から4割へ引き下げた。脱炭素への投資がかさむことなどを理由としたが、発表のたびに株価は大きく下落した。株価純資産倍率(PBR)も1倍割れに沈んでいた。他方で過去の好決算でため込んだ内部留保が厚く、自己資本はだぶつき気味だ。

電力・ガス分野をカバーする、みずほ証券の新家法昌アナリストによれば、「東ガスはライバルの大阪ガスと比較しても資本効率改善に向けたコミットメントが弱く、市場はフラストレーションを感じてきた」。

ところが今般、笹山社長は現行の4割という総還元性向を引き続きの基準としながらも、機動的な自己株取得などで事実上水準を引き上げていく考えを示した。2024年4月の自己株式取得の発表に続き、追加の取得方針を発表したことは、「自己資本適正化に向けての意欲の強さを示すもの」(新家氏)と評価された。

「10月30日の発表には大変驚いた。(追加の自己株式取得など)株主還元の積極方針を打ち出したことで、東ガスは大阪ガスと同等の総還元利回りを期待できる状況になってきた。この日を境に、株式市場は東ガスをポジティブな目で見るようになった」

電力・ガス分野を長く担当する大和証券の西川周作アナリストは、同社の姿勢の変化をこう評価した。

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