物言う株主エリオットが狙った東京ガスの「急所」 低株価の原因見抜き、還元、資産売却へ圧力

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大和証券の西川氏は「不動産事業は、東ガスの決算に貢献している。それだけに一括で売却される可能性は少ないだろう」と見る。そのうえで、「REIT(不動産投資信託)にある程度まとまった量の不動産資産を譲渡することはありうる。東ガスが不動産の扱いについて本気で考えなければならなくなったことは確かだ」と語る。

東ガス広報部は、不動産物件のうちどれがコア(中核事業)でどれがノンコア(非中核事業)であるかについて「個別の不動産物件への回答は差し控える」としている。そのうえで「保有資産ごとの収益管理を徹底しており、低稼働率、赤字物件は市場賃料化の徹底等を通じた収益改善を行っている」(同広報部)という。

また、「保有資産の多くは東京ガスグループ用途であり、グループとしての利益最大化に貢献しているものと考えている」という。同時に「各部の事業戦略等に従い、(事業所の最適配置等)外部利用に変更するなど、外部収入の増大に向けた取り組みも進めている」(同広報部)とする。

豊洲の土地はどうするのか?

最近では資産効率を高める取り組みの一つとして、2024年3月に私募REITである「東京ガス不動産プライベートリート投資法人」を設立。賃貸住宅をすでに運用資産として組み入れている。2025年には500億円を超える規模を目指すと表明している。

同REITは連結対象外であり、東ガスが保有不動産を売却した場合、その売却益は連結決算に取り込まれる。また、グループ企業である東京ガス不動産の子会社として設立された東京ガス不動産投資顧問が私募REITの資産運用の実務を担っており、その対価として手数料を私募REITから得ている。つまり、その手数料は東ガスグループの連結業績に寄与する。

不動産事業は、現在、力を入れようとしているソリューション事業とも関係を深め、地域エネルギー供給や再生可能エネルギーの利用など、戦略的な意味合いも強まっているという。

こうした取り組みをエリオットはどのように評価するのか。事情を知る関係者によれば、エリオットは東ガスが持つ豊洲の土地について、大手不動産会社などと共同開発して価値を向上させるべきだと考えているという。

「物言う株主」として知られるエリオットは、これまで大日本印刷や三井不動産などの株式を取得し、自己株取得や資産売却を要求。企業に積極的に応えさせることで成功を収めてきた。中計の最終年度というタイムリミットが迫る中で、東ガスもエリオットが出した宿題に早急に答えを示さなければならなくなっている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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