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ビジネス #ハーバードで教えているメガヒットの法則

ハリウッド映画の超巨額投資がペイする理由 ハーバード流「ブロックバスター戦略」とは

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翌シーズンはさらに増やした。FOXテレビの人気番組『アメリカン・アイドル』からヒントを得て、オーディション番組『ザ・ヴォイス』で大きな賭けに出た。エピソードごとに200万ドルも費やした結果、この番組は紛れもない大ヒットとなった。

それどころか、2012年のスーパーボウル直後に放送されたこともあり、2012年2月、『ザ・ヴォイス』は『アメリカン・アイドル』を押しのけてアメリカで一番人気のテレビシリーズとなった。番組のひとつがトップに躍り出たからといって、NBCが過去の栄光を取り戻したわけではないが、同社の新経営陣がその栄光を勝ち取る妙案を手に入れたのは確かのようだ。

メガヒットを生み出すブロックバスター戦略

ワーナー・ブラザースの取り組みは、まさにNBCが避けようとしていた戦略であり、従来のビジネスの原則とは相反するものに思われる。映画スタジオやテレビ放送網の幹部はどんな理由で、自社の業績、さらには自社の存続さえも、毎年、莫大な予算を投じた数本の作品に賭けることにしたのだろうか。そしてほとんど回収が不可能と思われるほどのコストを、その作品に費やすことにしたのだろうか。

観客は移り気で、失敗の確率もきわめて高い。そんな業界ならなおさら、莫大な投資を控えて、多数の作品に少しずつ賭けてコストを厳密に管理し、「利ザヤを求めて管理する」ほうが、長期的には賢明ではないだろうか。

正反対なのだ。ワーナー・ブラザースやNBC、そのほか多くのエンターテインメント企業が痛い目に遭いながら気づいたのは、「ブロックバスター戦略」の有効性だ。

「ブロックバスター」という言葉は、第2次世界大戦時に空爆によって町の区画(英語ではブロックと呼ぶ)をまるごと破壊するほどの威力をもった爆弾の異名が由来です。圧倒的な影響力を表す比喩として使われ始めて、人気映画の観賞券を買い求める人たちの行列が映画館の区画を取り囲んで、長い列ができる様にちなんで、大型ヒット映画を表す俗語として使用されるようになったのです。日本で言えば、映画のメガヒット、横綱級ヒットという意味合いになります(鳩山玲人氏による解説)。

 

主要なテレビ放送網や映画スタジオ、出版社、レコード会社、ビデオゲームメーカー、それにエンターテインメント業界のプロデューサーは、ヒットを見込めるコンセプトを入手して育成し、市場に売り込むことに巨額の投資をすることで栄える。

さらに、そうしたヒット作品の売り上げで、そのほかのコンテンツのそこそこの業績を埋め合わせようとする。それが、こうした企業研究から著者が学んだ重要な教訓のひとつである。

つまり、商品ラインに均等にリソースを分配し(どんな商品が受けるのかわからない場合には、一見、最も効果的なアプローチに思われる)、利益を増やそうとしてコスト削減に努めるよりも、ブロックバスターを狙って大きくつぎ込み、「その他大勢」につぎ込む費用を大幅に少なくすることが、ショービジネスの世界でつねに成功を収める確実な方法なのである。

次回はスポーツの世界で、スパースター選手獲得に大金をつぎ込むサッカーチーム、レアル・マドリードの事例から、ブロックバスター戦略の有効性を検証したい。

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